2010-01-01から1年間の記事一覧

『難民』

次のとっかかりにこれを読んでみた。 いわゆるインターナショナリズムが、国境を消滅させると考えるのは間違いである。それは見えざる境界を維持し続けるのであり、その境界が内向きに機能すれば、かつての日本のアジア主義のように、他民族の自立や独立を封…

セラー・ドア・セッションズ

この間、この6枚組を聞きながら一連の本を読んできた。Live Evilのもとになったヤツですね。 ザ・セラー・ドア・セッションズ1970アーティスト: マイルス・デイビス,ゲイリー・バーツ,キース・ジャレット,ジョン・マクラフリン,マイケル・ヘンダーソン,ジャ…

集列性と集団

この辺りの本を読んでいるとどうしてもサルトルの「集列性」の話が思い起こされてくる。『弁証法的理性批判』を括るのは手間がかかるのでとりあえず解説本から。 ・集列体「さしあたり集団が第二の存在である集列体と区別されねばならぬ点は、後者が個人たち…

ベケットと「いじめ」

かなり昔のある少年を自殺させるに至ったいじめ事件の分析が演劇論にもなっているという秀作。なぜか、あまりこの業界で言及されているのをみたことがない。いじめ本シリーズの最後に、再刊されたこの本を再読。問われているのは人間関係のなかで起こってく…

「ザ・コーヴ」

一応ということで、「ザ・コーヴ」を見てきた。内容の偏向についていろいろ言われているようだが、そのこと自体はあまり気にならなかった。一定の立場から撮れば、それにあわせて駆使する奇妙なロジックも同時にあぶりだされてしまうわけで、反捕鯨派はやっ…

『いじめの社会理論』

というわけで最初の本も再読してみた。こうしてみると、書き方や力点に変化があるとは言え基本線は同じですな。他にも何冊か本を出してるけど、それはどうなんだろう?いずれにせよ、あらためて読んでみて、この本の方がいろいろ考えさせる論点が出ていて読…

灰野敬二

一度は聞きにいかねばと思いつつ、結構こっちでライヴをやってるので、なんとなく先延ばしにしていたのだが(そうしているうちに、高田渡は逝ってしまった)、今回は共演者が山本精一だし、ということで行ってきた。いや、堪能させていただきました。また、…

『いじめの構造』

こちらも新書本が出ていたので読んでみた。さて、最初の本の方はどんな内容だったっけ。 「ここで問題にしているノリの秩序(群生秩序)では、共同生活のその場その場で動いていく「いま・ここ」が「正しさ」の基準となる。強制された学校コミューンの局面ご…

『いじめ=〈学級〉の人間学』

この人がいじめの本なんて書いてるの?というわけで絶版本を入手。基本的には、人類学というか記号論、「二項分割と曖昧さの産出とは一挙におこなわれるひとつの事態の二側面にすぎない」(43頁)というところから、「集団の秩序とその同一性の創出」を把握し…

『〈非行少年〉の消滅』

不登校とあわせて少年犯罪でも同様の傾向が見いだされることを確認しておくことにする。まずは、少年に犯罪にかぎらず指摘されている、犯罪の稚拙化から*1。 「少年補導の第一線に携わっている実務家らの間では、最近は、少年の凶悪化というよりも、むしろそ…

『日本の難点』

しばらく前に「クロ現」で相変わらず自殺者3万人を越えるこの国だが、自殺にまで至るパターンが分かってきたといいつつ、そのパターンがきちんと紹介されなかったので、ライフリンクの活動をちょっと調べてみようと思っていたのだが、この本で紹介されていた…

『いじめ 教室の病』

あわせて旧著も読み返してみた。やはり、いじめを学級の病と捉えて学級の成員を①加害者、②被害者、③観衆、④傍観者、⑤仲裁者に類型化した分析は秀逸だと思う。学級という空間の意味づけとそこへ参入する動機付けが、多様化しかつ個人化したものになってきてい…

『いじめとは何か』

新書本が出たので読んでみた。初見の気になった部分を抜粋。 一般的に、いじめを行うのは、疎遠な間柄や日頃から仲の悪い子どもたち同士で起きると考えがちである。しかし、実態は逆で、「よく遊ぶ友達」の間でいじめが起きているケースが最も多く、次に多い…

『不登校ーその後』

書名にひかれてこちらも目を通してみたところ、前著でT・ハーシのボンド理論を引きながら指摘されていたことが改めて確認されており、「ごく些細なことをきっかけとして今のこどもたちが不登校に陥っていくのは、こうした社会や集団や関係構造へのつながり…

森田洋司『「不登校」現象の社会学』

いじめや不登校のことを調べていくうちにこんなことを考えることになるとは思わなかったが、http://d.hatena.ne.jp/Talpidae/20100812/p2の続き。 日本の「伝統」的な「公」の概念にのっとれば、階層をなした組織のより上位のものが「公」であり、より下位の…

「森村泰昌 何ものかへのレクイエム」

豊田市美術館 最近、美術館に足を運んでいる余裕がなく、すっごく久々に美術館へ行った。相変わらずのセルフ・ポートレイトなのだが、数年前横浜でやったときは、名画の再現というモチーフでやっていて、そのなかに三島由紀夫のそれも含まれていたと記憶する…

久保覚

発表時、掲載雑誌で読んだ『先生と私』を単行本で再読。再読して、久保覚というネットワーカーの存在が記憶から落ちていたことに気づかされる。久保覚は、花田清輝に私淑し、1960年に現代思潮社に入社、1967年にせりか書房を設立し、『新日本文学』の編集長…

森田洋司『「不登校」現象の社会学』

竹川氏の二著はいじめと私事化との関連についても論じているのだが、議論が中途半端な感じがするので、もっと本格的にこの点について議論をしており、いじめとも無関係というわけではないこの本を読んでみた。「可視性」という概念がちょっと混乱しているよ…

インフラと公教育

マスコミではアメリカの景気が減速しつつあり「宴会」が始まっていると報道されているけれど、クルーグマンによれば(『朝日』今日付朝刊)、連邦政府の支出はある程度増えているが、州・地方政府は支出を削減している。「政府支出全体に注目すれば、ほとん…

『いじめと不登校の社会学』

いうまでもなく「学級集団は、その成員である生徒にとって一定時間以上出席することを強制される所属集団で」(68頁)あり、教科学習の習得という集団目標と社会化機関としての第二の目標を有する一方、生徒たちの生活の中心に位置しており、教師や他の生徒た…

『いじめ現象の再検討』

なんだか、いじめを考えていたら、日本社会論をやってるような調子になってきた。学校が勉強する場所であるということが自明のものと思えなくなるとき、学校はまず何よりも人間関係を取り結ぶ場へと変容してしまう。ところで、いじめが大人の世界にもあるこ…

『いじめの構造』

この夏にやろうと思っている仕事のひとつの手始めに未読のいじめ本をいくつか読んでみる。この本、わりと先行研究に依拠している部分が大きく、またいじめ以外の学校生活とのかかわりや子ども達が使っているという「スクールカースト」という用語が実際には…

『世直し』

農民層の分解過程で、百姓的世界の意識化が起こる。 18世紀半ば、百姓的世界の意識化が成立する」。「現実の農民生活が大きく変動し始めたからである」。「農民生活の変動は、この商品経済・商品生産の展開によるものであった」。「そして、この商品経済の…

アタリ『金融危機後の世界』

私のお約束としてレバレッジを効かせるために経済がらみの本を読む。おさらい的な内容ではあったけど、よく指摘されている中産階級の没落がきわめて人為的な過程のなかで作り出されてきたことがはっきり書かれている。それから、インサイダー取引とかいうけ…

「抑止力」

みんなの党についてのなんだかものたりない特集についてはともかく、この対談のこの話はたしかにあるかもと思った。当時、鳩山元首相がいきなり「抑止力」云々と言い出して、この人、何をいまさらとか思ったりしたわけだが、その後、この7月末に菅直人首相の…

ヴェトナム戦争の記憶/記録

「ハーツ・アンド・マインズ」(74)、「ウィンター・ソルジャー」(72)。まったく異なるアプローチから撮られた2作品だけど、いずれも捉えた映像がスゴイ。当時、こんなドキュメンタリーが撮られてたなんてまったく知らなかった。 それに、兵士たちがジュ…

北山修 最後の講義

ボクは中高時代に北山修から圧倒的な影響を受けており、当時出ていた本はすべて読んでいたのはもちろん、手に入るレコードはすべて入手し、出演したラジオ番組もかなりフォローしてきたつもりだ。でも、いつの頃からだろう。彼の言うことにどこか違和感を覚…

青木昌彦

ブックオフで見かけて、ブント時代のことも書いてあったのでついつい買って読んでしまった。経済学の泰斗の名前がいろいろ出てくるのは、当然のこととして、オルグされたのが廣松渉だったとか、高橋悠治が中学時代の友人だとか、ディランとのすれちがいとか…

笠松宏至『徳政令』

今頃、この名著を読んでいる。 われわれにとって法律というのはかなり身近なものであるはずなのであるけれど、法律そのものに身近に触れる機会というのはそうそうあるものではない。それでも、六法をひけばどんな法律があるのかわかるし、それなりに努力すれ…

保坂智『百姓一揆とその作法』

「近世社会には、百姓らが武器を持ち権力と戦闘するのが一揆である、という認識が存在し」(7頁)、その掉尾を飾るのが「島原・天草の乱」であり、「島原・天草の一揆は、その発生当時一揆として認識されていた」(5頁)。 こうして「一揆」と呼ばれる民衆運動は…