ラボラトリー・ライフ
「ラボは文書への描出システムである」。
参与者たちが一つの一つの客観的存在として描写している人工的な実在は、実は描写装置の使用を通して構築されているのである(p 53)。
今や観察者は、以前は論文が混沌として入り乱れているように見えていたものを、多数の言明を含んだネットワークという観点から観察できるようになった。ここでいうネットワーク自体が、言明について言及したり、言明を結びつけたりする大量の操作から成っている。こうした見方に立つならば、何らかの見解の歴史は、さまざまな操作の結果としてその見解がある言明タイプから別の言明タイプへと変換され、その事実性のステータスが徐々に減殺あるいは強化されてきた過程として記録することができる(p73~74)。
「アイデアの思いつき」とは、複雑な物質的状況の要約的表現である。
個人のアイデアや思考プロセスというものは、物質的かつ集合的な事情の一切合切を、特定の形で発表したり単純化したりした結果として生じるものなのだ(p160)。
実在と局域的な状況の区別というものは、言明が事実として安定化したその後でしか存在しないものなのだ。
換言すれば、言明が事実になる理由を説明するのに「実在」を利用することはできないということである。というのも実在の効果はそれが事実になった後になってはじめて得られるからだ。その実在の効果が「客観性」であろうと「外在性」であろうと同じことである。論争が解決したからこそ言明は実体と実体についての言明に分裂するのであって、論争の解決に先立って分裂するなどということはない(p171-172)
トマス・アクィナスの政治思想
中世の政治思想
- 作者: J.B.モラル,John B. Morrall,柴田平三郎
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