2009-01-01から1年間の記事一覧

菅原和孝『会話の人類学』

この本での会話の順番取りシステムの理解とかかなりあやしいところが散見されると思うのだが、フィールドから引き出される知見そのものはとても面白い。この本の全体を通じて確認されるグイ(ブッシュマン)たちのやりとりの特徴はまずなによりも同じことの…

菅原和孝『語る身体の民族誌』

これを会話分析といわれると違和感が出てくる部分も多いが、これまで読みあさってきたなかで分かってきたことを確認する事例として。 語りの繰り返しということや、 言うまでもなく、かれらはこの民話を繰り返し語っているのである。しかし、それは単純な反…

ペーター・ブロッツマン

相変わらず遊んでます。もちろん、仕事を片付けてからですが。で、帰宅してまた仕事してますが。それはともかく、このFull Blastってトリオ(ブロッツマンのサックスに、エレキ・ベースとドラムスがからむ)はスッゴイ。久々に、思いっきりフリーキーなジャ…

志らく独演会

去年の年末は大阪フェスまででばって談春の「芝浜」を聞いてきたのに、今年はお仕事とかぶって談春を聞きにいけない。その代わりにというわけではないが、談志の独演会で代演したときの「子別れ」の壊し方が面白かったので、今度は志らくもということで独演…

川田順造『口頭伝承論』

やっと読破。『プラトン序説』で指摘されている「声の文化」における詩人の社会的地位の高さは、以下の指摘からも確認できるように思う。 まず語り手についてみますと、ジェリの起源をしめす伝承の中には、先ほどマンデ王族の起源伝承にも出てきましたが、将…

兵藤裕己『声の国民国家・日本』

この人の前著、買ったままどこかに埋もれているはずなのをやっと見つけ出して読む。これも面白い。この話ですべて説明がつくのかどうかは議論の余地があるだろうし、この「国民」って何だろうと思ってしまうところもあるのだが(だから、括弧付きなんでしょ…

矢沢永吉『アー・ユー・ハッピー?』

ちょっと気になったので、永チャンのもう一冊の本も読んでみた。そしたら、永チャンはプロモーターと手を切って、基本的に自分のところでコンサートの制作を手がけていることが分かった。だから、あんなに音がよかったんだ。ちなみに、名古屋ドームのサイモ…

押井守『凡人として生きるということ』

何を書いてるんだろうと思って読んだら、これがなかなか面白かった。ただ、同じようなことを、最近繰り返しここで書いているので内容は紹介しない。でも、自分自身が年をとるにつれて、オジさんになるって楽しいなーと実感するようになった体験とよく重なる…

兵藤裕己『演じられた近代』

話がこんな方向に進むとは思っていなかったのだが、たまたま見かけて面白そうだったので購入して読んでみたら、やはり面白かった。われわれのなかに「声の文化」の名残がいかにどのような形で根づいているかを考えるうえでとても役に立った。 むしろ等時的な…

矢沢永吉

今年の夏前に、最近の永チャンが語る番組と、30年くらい前に永チャンが語る番組の再放送があって、いずれもとても興味深かった。今も昔も、永チャンは、いい意味でちっとも変わってない。決してぶれることがなく、年をとった分だけ深みが増している。あま…

柳家三三ひとり会

仕事がいろいろ集まってしんどいときどうするか?私の方針はなんとか空き時間をつくって遊びに行くです。というわけで、若手の成長株だと思う小三治門下、三三のひとり会。「やかん」に「三人旅」に「不孝者」。これで三度目だと思うけど、最初に見たときに…

エリック・ハヴロック『プラトン序説』

この本をきちんと読んでいなかったのは大変な失敗でした。文字のない社会が社会を再生産していくためには継承されていかなければならないものがある。それはどのようにしてなされたのか?その結果、社会はどんな特徴を帯びてくることになるだろうか?そして…

『筑紫哲也』

当時、ボクは、この人にたいして複雑な印象を抱きながらテレビをみていたのだが、そうはいっても、「ニュース23」が始まってからボクの見るニュース番組が次第にここに固定していったのは確かだった。何かあると、今日の筑紫は「多事争論」で何を話すんだろ…

川田順造『口頭伝承論』

とりあえず第一論文を読了。いや、この本スゴイ。面白いよ。 スペルベル&ウィルソンは、関連性理論を展開にするにあたって、判決のような「宣告型」や約束のような「行為拘束型」を発話行為の例外ケースとして棚上げしてしまうわけだけれど、この本を読んで…

「犯罪学者 ニルス・クリスティ」

ノルウェーの犯罪者の更生施設やそこで暮らす「収監者」の様子を紹介しながら、ニルス・クリスティという犯罪学者に森達也が話を聞くというドキュメンタリー。見ていて正直のところ、ノルウェーのやり方に驚きをおぼえたし、いろいろ教えられるところが多か…

大野和士 リオン歌劇場管弦楽団

音にきく大野和士を聴きに行く。ボクはあまりクラッシックのコンサートにはいかないから比べるものが少ないけれど、やっぱり凄いんじゃないですか?一番やすいチケットを買ったんだけど、その方が指揮がよく見えてよかった。でも、結構空席が目立ったよ。そ…

イニス『メディアの文明史』

手許にブツがないので借り出してきた。ちょっといかがわしい感じがしないでもないのだが、なるほどと思わせる記述も多く面白い。カルスタ流行りなら、このよく知られているはずの本、復刊されてもよいと思うのだが、新曜社にはそういう予定はないんですかね…

パリ・オペラ座のすべて

先週末はひたすら今日ワイズマンを見るための体調回復に専念するはずだったのに続出するトラブルがボクのところに舞い込んでくる。でも、(だからこそ)行く。途中で集中力が切れ気味になったけど、それでも面白かった。やっぱり、ワイズマンのショットって…

『マクルーハン理論』

相変わらず『プラトン序説』が見つからない。これって、中世ヨーロッパで典礼の「演劇化」が進行していく過程で起こってくる問題なんだけど、よく考えてみれば、普遍論争のことだよね。世俗社会が発展していく過程で、書き言葉の力も大きくなるし、キリスト…

池上俊一『歴史としての身体』

さて、これまでいくつか読んできた本からも確認できたと思うのだが、中世の人間にとって身振りや言葉づかいは相手にとって意味を持つというだけでなく、宗教的な意味合いを持っていたというか、「実在する」とされる神や悪魔ともかかわりあっていることにな…

ル・ゴフ『中世とは何か』

ル・ゴフのインタビュー本。ル・ゴフは中世のメルクを、中世に登場した新しい階層である、取引を行う二つの職業人に見ている。 商人=銀行家や知識人を通して、私は中世についての考察の品質的な枠組みを設定できたと思っています。この二つの社会階層の出現…

ル・ゴフ編『中世の人間』

これも期待した内容からは少し外れた本だったけど、面白く読めた章もあった。とりわけ、グレイトゥゼンの話の先触れになるような部分。たとえば、都市にはギルドのような組合とは別に、かなり濃密な相互扶助関係を強いられる居住地区での顔見知り同士の関係…

『リミッツ・オブ・コントロール』

ジム・ジャームッシュの新作。行けるときに行くべしということで、先週へろへろの状態で見に行って、とりあえずここで問題になっているのはある「選択」なのだということは分かったものの、いろいろ仕掛けがありそうなので、こりゃもう一度見なければ話にな…

オング『声の文化と文字の文化』

グレーヴィチを読んで、この本を読んでみると、身振りの儀礼的性格、個人と世界の未分化等々、グレーヴィチが中世ヨーロッパ社会の特徴として取り出したものの少なからずが、「声の文化」の特徴ときわめて親和性が高いことがよくわかる。というわけで、この…

アーロン・グレーヴィチ『中世のカテゴリー』

私は、中世の専門家でもなんでもないけれど、この本、間違いなく名著でしょう。すっごく面白い。世界を生きる個人とその個人の生きる世界が連続的な関係にある中世の世界像が、中世以前のゲルマンの世界観と対比されながら明らかにされていく。たとえば、「…

燐光群『BUG』

これまで見てきた燐光群の芝居はすべて面白いと思ってきたけれど、今回の『BUG』はボクのなかでは保留。評価をどっちにしたものか固まらない。台風のせいも少しはあろうが、今回はなぜか客席もがらすき。迫力の演技ではあったけれど(でも、前半は主役の女性…

なぜか最近はスガシカオを聞いている

最近、スガシカオの最初の2枚をよく聞いている。この2枚、出た当時、歌詞もそうだったけど、なによりファンキーな感じがとても気に入って*1、ヘヴィー・ローテションになっていた。で、どんなヤツだろうと彼がDJをしているFM番組なんかも聞いていた。あら…

J・ル・ゴフ『中世の身体』

中世の風俗とは身振りの文明であり、身振りは信仰と結びついて極めて儀礼化されている。 中世の風俗の文明とは、身ぶりの文明である。観念の上で、霊性、肉欲の放棄、石の聖堂を志向しているこの世界において、身ぶりの表現は自然なものではまったくない。儀…

グレイトゥゼン『ブルジョワ精神の起源』

もっと違う内容を期待して読んだのだが、おれは何をやってるんだという話にはなりますが、結果的にはとても面白い本だった。ブルジョアジーの生き方・考え方がいかに教会にそぐわないもので、教会がどこまでそれとおりあえて、最終的にはおりあえなかったこ…

アマルティア・セン/後藤玲子『福祉と正義』

この本、すっごく面白い本だと思うのに、なぜ合評会の集まりが悪かったのだろう?簡単に本書の論点をいくつかピックアップ。 まず、基本線を確認しておくと、「ジョン・ロールズの政治的リベラリズムとアマルティア・センの社会的選択理論に共通する視座は次…