グレイトゥゼン『ブルジョワ精神の起源』

 もっと違う内容を期待して読んだのだが、おれは何をやってるんだという話にはなりますが、結果的にはとても面白い本だった。ブルジョアジーの生き方・考え方がいかに教会にそぐわないもので、教会がどこまでそれとおりあえて、最終的にはおりあえなかったことがよくわかる。

 教会はブルジョアキリスト教徒をついに統一できなかった。ブルジョワは、個々のブルジョワは依然カトリック教徒であろう。しかしブルジョワジーは、ブルジョワという身分はそうではない(334頁)。
 ブルジョワと道徳を社会的・経済的な関係に還元することは、その価値をなんら割引きするものではない。反対である。紳士とは真面目なブルジョワを昇華した観念で、道徳の教理問題に出てくるような抽象的人物ではないからこそ、一つの実在を表している。それは、近代ブルジョワジーが教会の考える古い人間に対置する新しい人間なのだ。この新しい人間は自分を価値を照明した。彼の最高の論拠は自分自身の存在である。実生活だけが証示できるものを、彼は見事に証示してのけた。こういうふうに生活すれば成功するということである(341頁)。

ブルジョワ精神の起源―教会とブルジョワジー (1974年) (叢書・ウニベルシタス)

ブルジョワ精神の起源―教会とブルジョワジー (1974年) (叢書・ウニベルシタス)