パリ・オペラ座のすべて

 先週末はひたすら今日ワイズマンを見るための体調回復に専念するはずだったのに続出するトラブルがボクのところに舞い込んでくる。でも、(だからこそ)行く。途中で集中力が切れ気味になったけど、それでも面白かった。やっぱり、ワイズマンのショットって見せるんだよね。で、そのショットをつないで組織全体を捉えていこうとするわけだけど、オペラ座の場合はどうなるだろう?

 と、思っていたら、裏方のショットなんかは少なく、いくつもの同時進行していく作品のリハーサルや練習風景がとっかえひっかえ映し出されていく一方で、ディレクターのオフィスで起こることがインサートされてくるのが基本線といっていいのかな。オペラ座では常に興行を打ちつづけているわけで、当然ながら、一つの作品が上演されたら、その次の作品という具合に、次々と作品をかけていかなければならない。となれば、オペラ座は常に複数の公演の準備が並行して進めなければならないし、新しい作品の依嘱が行われたりもする。それがひとつ、またひとつ舞台として実現していくのである。そして、実現するたびに朝のパリの街が映しだされては、それが(オペラ・バスティーユから)ガルニエ宮へ戻っていき、その度に、窓から差し込む光が映し出す影が長くなっていく。実際、映画のなかでディレクターが3年間ごとにスケジュールが組まれているという話をしていた。

 また、オペラ座を維持するためにはお金がかかる。オフィスで大口の寄付をするアメリカ人をどう接待しようなんて話が出てくる一方、建物の補修工事がされていたり。それに、ダンサーだって、年齢的にハードな役は出来なくなってくる者もいれば、伸び盛りのダンサーの者も出てくる。そうしたダンサーたちの話もディレクターは聞いてやらなければならないし、ダンサーたちの第二の人生という問題もある。ダンサーの職業人生は短い。まともに踊れるのはせいぜい45歳くらいまで、というわけで、年金問題まで出てきて、定年が40歳であるオペラ座のダンサーの年金は40歳から支給されるがのだが、支給年齢は変わらないもののそのシステムを国がいじるらしい。等々といった具合に、オペラ座という組織を構成するいくつもの要素がそれぞれ入れ替わり立ち代わりしていく様をとおして、組織が続いていく仕組みが見えるようになっている。というわけで、それもまた興味深い。

 まあ、リハーサルや練習のシーンがたくさん出てくるので、ダンサーたちの体の使い方を見ているだけで面白いというのもありますが、そのときのダンサーたちをとらえるカメラがうまいところにいるんだよね。でも、この映画をもう一回見に行くのは無理か。それから、ABTのときはどう撮ってたっけ、それも気になってきた。ところで、本当にガルニエ宮の上でミツバチを飼っているんだろうか?