読書

若者が《社会的弱者》に転落する

出たときは衝撃的だったのにいま読むと当たり前すぎるというか、旧聞に属するような話になってるな。当たり前か。 1,学校教育制度の拡充と青年期の登場。モラトリアム期間の延長。独身貴族・パラサイトシングル、親との同居。離家の遅れ:フリーターと未婚…

日本会議の研究

なんとか投票前に読了。だんだんとその存在が目立つようになってきた日本会議、いまや内閣のほぼ全員が日本会議やその類縁組織の関係者だ。そして、この日本会議がもとは「生長の家」に端を発する宗教連合であり、いまや日本遺族会は先細り、自民党最大の支…

働くということ

久々に読み返してみると、よい本だとは思う一方で話が飛ぶところと繰り返しが気になるな。話しおろしかしら。むかしむかし、日本の労働の多様さ、勤勉の多様さ、不平等の多様さ。さて、いまは。 1,ILOのノーベル平和賞受賞。ところが、労働と雇用に関する…

金融が乗っ取る世界経済

ドーアの本いくつか読み返してみたら、重複も多く冗長だった。そういう意味ではとっつきにくいが、この本が一番おすすめかもしれない。ピケティの先触れとしても。1,英米モデルの勝利。経済の金融化。米国おける金融業の全利益所得、GDPにおける割合の増…

ベイシック・インカム

ベイシック・インカムといえばライフスタイルの多様化に伴う新しい生活給の保障の在り方、というイメージがもっぱらだった私には、無駄な部分も多かったけど、面白い本だった。これでいくと、控除から現金給付へ移行するのとBIへの移行は相対的な問題にすぎ…

戦後史の正体

今頃になって話題のこの本を読む。まあ、いくらも指摘されていることだろうけれど、事実と主観的判断がないまぜになっているのでそれを腑分けして読まないと持って行かれてしまう。とりわけ、近年の経済関係についての記述は自分が見聞きしてきたことでもあ…

「つながり格差」が学力格差を生む

1,高度経済成長期は都市部と農村部という地域類型別学力格差よりも都道府県別の学力格差が大きかった。「都鄙格差」。が、以降この差は同和地区をのぞけばかなりならされた。学力低下は学力格差の拡大に由来する。文化階層や基本的生活習慣のちがい。業績…

SIGHT

4月に出ていたのか不定期刊行にしてから、かえってタイミングを読まなきゃいけなくなって、アクチュアルさを失ってるんじゃないか。まあたしかに安保法制は4月からの施行だけど、その間に国会の開催要求を黙殺してるし、4月以降でも安保法制の廃止法案の審議…

独立国家の作り方

やっと読んだ。前半のモバイル・ハウスや個人が「公園」を作ってしまうといった、彼が観察して見つけていったものについてのお話はとても面白い。ま、他の本にも書いてるのだろうけれど、でも、そこから考えていく彼の発想さらには理念的なものになると面白…

ガロア

というと、昔、読んでインフェルトの本を思い出すのだが、いまだに群論の発想はなんとなく分かっても詳細はよくわからない。の詳細な伝記としては面白かった。ガロア―天才数学者の生涯 (中公新書)作者: 加藤文元出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2010/1…

就活原論

あまり、期待せずに読んだら毎度の話でもあるけれど、なかなか面白かった。学生は読んどいて悪くないと思う。たあだ「ひとかどの人物」になるというのはな〜。昔ながらの話でいえば、一通り仕事ができるようになってようやく「ひとかどの人物」になれるかど…

社会学入門

やっと今ごろ読んでいる。基本的には『モダンのクールダウン』の路線なのね。わりと前半は納得して読める部分が多かったけど、ドーキンスやスペルベルを使うぐらいなら、素直にルーマンを使えばよいのにと思ってしまいました。 社会学入門 〈多元化する時代…

大久保怜のナツメロ

そういえば、ナツメロなんて言葉あまり聞きませんねって、私がテレビを見ないせいかもしれませんが、ここに出てくる人物の名前のかなりはさしてなじみもないのになぜか知っており、歌も少しは聴いているはずだ。といっても、親が見てる番組を子どもながらに…

学力低下論争

いまごろ学力低下論争のおさらいをするとは思わなかったけど、当時、この本は読んでなかった。全体を概観するには便利な本ですね。学力低下論争 (ちくま新書)作者: 市川伸一出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2002/08/01メディア: 新書購入: 2人 クリック: 2…

日本戦後史論

『永続敗戦論』はけっこう面白かったけれど、これだと与太話のオンパレードという感じではないかな。「サヨク」ならもう少しがんばってね。「日本会議」の「に」の字も出てこないよ。戦後日本史や憲法の勉強もきちんとやっておかなければなりませんね。って…

メタファーの記号論

気になるのでこちらも探し出してみたら、すでにスペルベル&ウィルソンが参照されているではないか。SWのグライス批判と代替の説明をまず『人類学とは何か』から引っ張り出している。その後も、同じラインの議論が参照されてますね。ブラックの相互作用説…

言語における意味

あら、こんな本、いつのまに出ていたの?というわけで、とりあえず入手して、最近、お勉強しなおした部分に相当するところを読んでみる。これはお手軽に辞書代わりに使える教科書として便利ですね。言語における意味作者: アラン・クルーズ,片岡宏仁出版社/…

表象は感染する

というわけで、『関連性理論』の前後の邦訳のあるダン・スペルベルの単著を読んでみた。この人首尾一貫して同じ問題意識で考えており、それがだんだん洗練されて行っているのがよく分かる。しかし、この領域横断的な発想法には正直、舌をまく。私は、立場上…

象徴表現とはなにか

この本、通読した印象がないというか、ほとんど内容がアタマのなかに残ってないんだけど、最後まで線が引いてあったから読了していたらしい。だったら、なぜ気づかなかったんだろう。関連性理論の原型はほとんどここに出ているではないか。しかし、象徴の「…

人類学とは何か

訳者は菅野盾樹さんだし(ってか、彼がずっと注目していたんですね)、序文はこれ人類学なんかいなという調子だし、理論人類学というけど、メタ人類学というか人類学批判みたいな感じ。なによりも、文化人類学と心理学は相互補完的なんですね。そして、付録…

一般言語学の諸問題

いまから思えば、スペルベル&ウィルソンの発話行為論の分割は、基本的にはバンベニストの議論を踏襲したものなんだな。で、上記議論に違和感を覚えるのは、実は、バンベニストの線引きと一致しなくなるからである。また、バンベニストは人間の言葉の特徴を…

ひとは発話をどう理解するか

久々に再訪。スペルベル&ウィルソンの『関連性理論』とつきあわせて読むと、解説や補足になって便利。しかし、こうした拡張はありなのかと思えるところも。とりわけ「祈願」(good wishes)を命令や依頼と同様のカテゴリーとして扱えると考えるところに違和…

関連性理論

ようやく、原書とつきあわせるところまで到達。いま読み返してみて、なぜか以前より話がアタマにすらすら入ってくるようになったんだけど、結局、この訳あまりよいものではないなと思った。誤訳ではないけど、何を言ってるのかよく分からないとこが結構ある…

関連性理論

関連性を論じるにあたって、動機みたいな語彙は一義的には排除されてしまうんだな。 関連性理論―伝達と認知作者: D.スペルベル,D.ウイルソン,Dan Sperber,Deirdre Wilson,内田聖二,宋南先,中逵俊明,田中圭子出版社/メーカー: 研究社出版発売日: 2000/08メデ…

関連性理論

ひたすら要約を作って議論の構成を吟味できるようにしている。関連性理論―伝達と認知作者: D.スペルベル,D.ウイルソン,Dan Sperber,Deirdre Wilson,内田聖二,宋南先,中逵俊明,田中圭子出版社/メーカー: 研究社出版発売日: 2000/08メディア: 単行本 クリック:…

関連性理論

(続き)文脈はあらあじめ与えられているのではなく、理解過程の全段階で特定されていく。この特定にあたっては、「新しい想定を処理するのに使われる文脈は、本質的には個人の古い想定の部分集合であり、新しい想定がそれと結合して様々な文脈効果を生みだ…

関連性理論

昨日から、スペルベル&ウィルソンの『関連性理論』を読み返しているのだが、あらためて読むとあげられてる事例からではこの議論にほとんど説得力が感じられないのに驚く。あ、掘り下げようとするポイントは面白いですよ。しかし、これでは2章に読み進めら…

私の1960年代

山本義隆がとうとう自らの運動経験を振り返ったというわけで。最初は全共闘が成立していくまでの過程で、これは面白いと読み進めていったのだが、途中から、ご本人の仕事にもつながる、明治以降の日本の科学技術の発展を振り返る部分に突入。そもそも科学と…

民を殺す国・日本 ─足尾鉱毒事件からフクシマへ

最初に原発事故の経緯が確認され、話が足尾銅山鉱毒事件に移る。正直なところ、足尾銅山の件、ここまで詳細に知らなかった。そして、あまりに水俣で同じ構図が繰り返されていることに驚く。「永久示談」なんて熊本地裁第一次訴訟判決において「公序良俗に反…

ハイエクの経済思想

きれいに整理された読みやすい好著。ただ、「ハイエクの経済思想」と銘打つわりには、ご本人がはじめにで書いているとおり、社会主義経済論争も、体制選択の問題も論じられないという意味では、あんまり経済思想っぽくない。しかも、最後の2章は情報社会論と…