金融が乗っ取る世界経済

ドーアの本いくつか読み返してみたら、重複も多く冗長だった。そういう意味ではとっつきにくいが、この本が一番おすすめかもしれない。ピケティの先触れとしても。
1,英米モデルの勝利。経済の金融化。米国おける金融業の全利益所得、GDPにおける割合の増大。市場の制御神話。19c先物市場の発達CFD。金融派生商品市場と為替市場の膨張。証券化CODによる信用創造とリスク分散。さらにそれを保険化CDS。投資とギャンブル。それが毒物化。信用バブル。資産は実態のない「約束」にすぎない。信用を裏付けていたのは、従業員の報酬システムとリスク管理システムへの過剰な信頼。危機への対応は国家任せ。モラル・ハザード。間接的な銀行から直接的な市場金融業へ。
株式資本所有者の権利の強化。経営者資本主義から投資家資本主義へ。職業的経営者の没落。株主利益の最大化。M&A。安易な解雇。産業資本から金融資本へ、一方での資本の分散(バーリ&ミーンズ)。機関投資家による株式の再集中化。展望の短期化。敵対的買収。市場規律の強化。株主重視。企業収益と自己資本比率を上げる。公器としての企業、ステークホルダー論から株主価値論、信託としての企業。学説の変遷。
「株資本所有者の民主主義」。証券文化の推進による自国の競争力の強化。ヴェンチャー企業への投資。年金基金の資産運用の緩和。確定給付型から確定拠出型へ。株式保有を拡大する一方、年金給付の予測が容易になり、企業評価や転職も容易になる。日本の立ち後れ。とはいえ、イノヴェーションが経済成長に貢献するとはかぎらない。需要面も大事。株式市場がイノヴェーションに貢献するというわけでもない。国際競争力といっても経済成長がすべてではない。生活水準の向上・安定。日本的経営はなぜ評価されたのか?
2、金融化の結果、所得や富の格差が拡大する。とりわけ、アングロサクソン圏、経済が成長しても、中位以下の所得が停滞する。グローバリゼーションによる競争、科学技術の発展と能力差の顕在化。累進性の緩和。企業福祉の浴せと市場の変動による生活、雇用・賃金の不安定性。優秀な人材が金融業に吸収されすぎる。メディアへの影響。金融の非間接化による信頼の侵食。情報の非対称性の悪用。
ヨーロッパの金融化の流れ。金融に特化した国はそれにみあった貢献をしているのか?たとえば、アジア危機。金融業が投機的な要素を増していくのは、個人の金融資産の増加ではなく、それを運用する投資ファンドなど金融業の方にある。もっとも、年金制度の劣化も貢献しているであろう。金融リテラシーがないのが悪い?
経済学は責任を否定する。ヴェンチャー企業による技術革新。シリコン・バレー。大企業の研究開発。個人の利益をインセンティヴにするか、企業の業績向上をインセンティヴにするか?日本にも浸透する成果主義。貧困農家の開発は金融業よりも多国籍企業に負うところが多い。資産市場のリスク分散?
危機があり、規制を行うのは国家であるが、金融制度はグローバルなシステムである。金融に関してはきわめて不十分である。ケインズの敗北、ブレトン・ウッズ体制IMF、国際通貨としてのドル。米国だけが自国通貨で海外債務を増やすことができる。それで、生産量より多い分だけ消費し、その分消費を押さえた日本や中国が国債で補填してきた。ここに問題があるのに手つかずのまま来た。
3,リーマン・ショック以降の国際協調の動きは下り坂に。欧米の銀行の成果主義的なボーナスの報酬制度の問題。安易にリスクをとる、社会的公正さ。それ以前から、企業経営者の報酬の増大が問題となっていた(あるいはイギリスの官僚の一部)。制裁がない一方、金融業者の影響が大きすぎてつぶせなくなる、モラルハザード。しかし、会社法改正の動きはない。金経政複合体。道�の衰退。現状維持以上のものにはならない。銀行の流動性比率を上げる。システム上重要な機関を指定し、他の銀行より厳しい規制を課す。報酬も制限する。最低資本比率の操作。自己資本比率をあげ資本調達のコストをあげる。金融業内部の分業強制。預金と投資。金融派生商品の市場登録。アメリカン・スタンダードの格付け機関の公共化。トービン税。社会的有用性に基づいた規制。アカルイミライ
金融資本が世界の経済成長率よりも高い率で膨張し、しかも、投資する主体が個人から組織に変わった。貯蓄の伸び率が投資の伸び率よりも高い。金利低下、金融資本の増加。要するに、金余りがハイリスクな投資を呼ぶ。社会保障が膨張し市場頼りになっていく。社会保障制度の衰退、個人化。企業の経営権の買収。日本も。会社は株主のものなのか?
 

金融が乗っ取る世界経済 - 21世紀の憂鬱 (中公新書)

金融が乗っ取る世界経済 - 21世紀の憂鬱 (中公新書)