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 4月に出ていたのか不定期刊行にしてから、かえってタイミングを読まなきゃいけなくなって、アクチュアルさを失ってるんじゃないか。まあたしかに安保法制は4月からの施行だけど、その間に国会の開催要求を黙殺してるし、4月以降でも安保法制の廃止法案の審議も黙殺してる。後者は提案自体はこの時点で把握できてるのに何の言及もない。同じことは刑事訴訟法の一部改正についても言える。この内容なら冬号で十分だよってか、それで、「憲法を守らない安倍政権」というのを打ち出した方が、選挙後の憲法改正論議も視野に入ってくるから、ずっとアクチュアルだったんじゃないかな。憲法を守れないヤツが憲法を変えようというのは噴飯物でしょう。あと、選挙を考えるなら、経済・財制裁策を考えられる人を呼んで来ないとね。
 というわけで、今号もあまりあまり面白くなくというか、上野千鶴子のご都合主義な「おひとりさま」発言に呆れ、田中秀征老害にまだつきあわされるのかと思う。興味深かったのは伊勢崎さんと藤原さんの発言。双方とも素朴な護憲派じゃないというのが教務深い。
 まず、伊勢崎さん。自分も国際法の知識の欠如を痛感しているが、安保法制で採用される概念と国際法で通用する概念の落差はきちんと考えなければいけない。典型的にはbv兵站とかそうだったよね。で、民主党政権時にソマリアの海賊退治のためにジブチに半永久的な自衛隊の基地を作ったということ。これ、知らなんだ。それを伊勢崎氏は軍事拠点と呼んでいるが、これ少なくとも日本の建前としては自衛隊の警察行動になるはずだけど、国際的にそれが通用するのかどうかは私にはよく分からない。伊勢崎氏の議論自体が、さらに吟味されてもよいと思うが、この雑誌単独インタビューなんでそうならないんだよね。もう一つは、交戦権のない自衛権とはなんなんだと。
 藤原さんは、ちらちらしていた本音がはっきりでてきたという感じで、エリート臭も漂う。彼は、民主党憲法改正手続きをふんだ集団的自衛権の容認と安保法制を期待していたのですね。日米同盟による日本のの安全保障と世界秩序への国際貢献を容認した上で、憲法の歯止めが欲しかったわけか。で、この先の憲法改正の危険を指摘しながら、反安保法制運動への流れも批判してる。でも、反安保法制の動きの少なからずは立憲主義の擁護だと思うんですけど。そして、藤原氏のむなしい民主党への期待は、同時に民主的手続きの軽視という意味ではエリート主義というか、だったら、藤原氏が理解している国際情勢やそこでの現状での日本の位置づけを語って欲しいな。
 というわけで、安保法制の論議は手続き的にはもう決着がついていると思うので、これが国際社会でどのような意味を持つかと、にもかかわらず可決したことがこの先どんな意味を持つかがもっと焦点になっていいと。ただし、後者は国民の最終的な判断に委ねられていることをお忘れなく。