戦後史の正体

 今頃になって話題のこの本を読む。まあ、いくらも指摘されていることだろうけれど、事実と主観的判断がないまぜになっているのでそれを腑分けして読まないと持って行かれてしまう。とりわけ、近年の経済関係についての記述は自分が見聞きしてきたことでもあるのでホンマにそうかいなと思うところも多い。一方、知らないことも多いので勉強にはなる。たとえば、東京地検特捜部の前身は「隠匿退蔵物資事件捜査部」である。財閥解体後に作られたのが経済同友会である。
 ただ、対米追随路線と自主路線という色分けは単純すぎるように思える。片山内閣時に芦田外相は「米軍の有事駐留案」を主張していた。鳩山政権時、重光外相は米軍撤退を要請し、在日米軍支援のための分担金の廃止を主張していた。ソ連との国交回復を果たしたのは鳩山政権時である。抑留問題の解決。岸首相は、安保条約を国連憲章に合致したものにすること、駐留米軍の最大限の撤退、日米行政協定の全面的改定を考えていた。中国貿易にも貢献したと。他方で、吉田茂は最後に日本の軍備に反対したのでパージされる。という図式だが、見方を変えれば、自主派は改憲・日本の再軍備を考えていたわけで、その後、どのような日米関係が作られたのかを考えるとよく分からないところがある。
 池田内閣による中国貿易の拡大。佐藤内閣時にヴェトナム戦争への支援を拒む一方で(このときすでにshow the flagと言われているそうな)、非核政策と沖縄返還(密約を含む)。沖縄返還におけるライシャワーの貢献。ニクソンの報復(?)。田中政権時の日中国交回復(72年)は米中の国交樹立(79年)より早く、の福田政権の全方位外交で日中平和友好条約が締結(76年)。こうみると、対中関係は米国よりもはやくうまく改善してきたのが70年代だったということがわかる。一体、この時期は吉田と鳩山のどちらのラインを受け継いでいることになるのだろう?二つの流れと言うよりは、やはり局面の展開を考えた方がいいのではないかな。
 最初に日米同盟と言い出したのはあ〜う〜大平で、鈴木善幸はこの含意を否定しようとしたものの、結局、不沈空母中曽根が米国の対ソ戦略にのる(P3C)。竹下の平和路線。ただ、大平から竹下は消費税導入の流れでもあるんだよね。で、プラザ合意。冷戦後へ。クリントンの無関心と小泉政権の転換。福田辞任による造反。そして、中途半端で何をやりたいのかわからない安倍政権。いまの日中関係をみると慚愧に堪えない。

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)

戦後史の正体 (「戦後再発見」双書1)