日本会議の研究

 なんとか投票前に読了。だんだんとその存在が目立つようになってきた日本会議、いまや内閣のほぼ全員が日本会議やその類縁組織の関係者だ。そして、この日本会議がもとは「生長の家」に端を発する宗教連合であり、いまや日本遺族会は先細り、自民党最大の支援組織として君臨しているということも分かってきた。でも、その実態はろくに知らずにいた。いまとなっては自分の不明を恥じるばかりである。おそまきながらこの本でいささかのお勉強。
 実は、この本を読み始めてすぐに思い当たることが一つあった。たまに地元の議会の審議事項を見ることがあるのだが、その内容はと言うともちろん政策の提案などは皆無といってよく、大半がなぜか国政に関わるなんたらかんたらの採択決議であり、それがしばしば右寄りと評価されそうな内容だ。政策立案能力もないのに、どれだけ意味があるか分からない国政にかかわる採択決議ばかりしている議会は無能だな。もう少し地方行政にもの申せる議会にできないものか、と思っていたのだが、この評価は半分はずれていたのかもしれない。地方行政には無能でも国政にはそれなりの影響があるらしく、しかしわれわれは決議の経緯をちっとも知らない、とすればこの地方議会の不十分な能力の行使の背景には日本会議の存在があったのかもしれない。
 実際、日本会議自体が「日本会議地方議員連盟」なる組織を持ち、さらに個別の地方組織も加えて地方自治体に影響力を与えた成功例が、歴史教科書採択運動と男女共同参画バッシング運動だったのだという。当時の自分の脇のあまさに恥じ入らざるをえない。とはいえ、こうした意見書採択運動の成果の先駆けは、もうこれは私が関われる以前と言ってよい「日本を守る会」による「元号法制化運動」にまで至り、その中心にいたのがかの村上正邦。あれそうだったのか。さらに運動の源流は「靖国神社国家護持法案」にまで遡る。そして、元号法制化運動」を支えたのが長崎大学正常化運動、つまりは右派の学生運動崩れの民族派(日本青年協会議)であり、その実力は二つの戦後談話に至る経緯によくあらわれているという。
 さて、昨今「盛んな」改憲話だが、日本会議改憲のターゲットにするのは実は憲法9条以上に、「緊急事態条項」と「家族条項(24条関連)」の追加だという。実際に、夫婦別姓に猛烈な反対運動を展開し、最後は明治憲法の復活まで視野にあるという。そういえば、伝統的家族の復活なんて議論もちらほらする。まったく、現実味がないんだけど一体どんな将来像を描いているのやら不安になる。って感じで、前半であっとなるんだけど、
 以降は尻つぼみ感がある。たしかに、これだけの集票組織があるなら、それにのろうとという議員も出てくるかもしれない。しかし、これってモラル・ハザードだよね。でも、第一次安倍政権と第二次安倍政権とでは何が違うんだろう。それに民族派と言えば、一水会とか日学同とかあったよね。と、思ったら、最後に生長の家鈴木邦夫の覇権が崩れる経緯が書かれていた。結局のところ、日本会議の中心は「転向した」生長の家に対抗する原理主義運動ということになるのだという。

日本会議の研究 (扶桑社新書)

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