ベイシック・インカム

ベイシック・インカムといえばライフスタイルの多様化に伴う新しい生活給の保障の在り方、というイメージがもっぱらだった私には、無駄な部分も多かったけど、面白い本だった。これでいくと、控除から現金給付へ移行するのとBIへの移行は相対的な問題にすぎなくなりますな。たしかに、ライフスタイルが多様化すればするほど、当然、一律の制度的保障はうまくいかなくなるし、そこからこぼれ落ちるる層も増えてくる。だったら、制度的保障ををやめて個人に現金を給付したらどんなことになるのだろうと。発想はよく分かる。熊本の震災後とか見てるとホントにそう思う。で、現行の日本の人口と経済規模だったらどの程度のことができるのかと。
また、地方分権をすすめて税源移譲すると、自治体格差が出てくるのではないかという指摘が出てくるが、これも現金給付になるとそれが自己責任になる。もっとも、これって、地方自治体レベルの問題を個人レベエルに落としただけで、自分がどんな土地やどんな人々と居合わせることになるかは偶有的だよな。もちろん、そこでより自分の能力を生かせるということもある(けぢお、やっぱり共有地問題は起きるんじゃないかな)。そうすると、どこまでパターナリズムを放棄できるかはやはりそれ自体としてとても大きな議論の対象になるようには思う。
1,家にとって子どもが資本財だった自営経済から雇用を中心とした世界へ。子どもは家族にとって消費財に。企業をつうじた社会保障制度。非正規の増加、企業福祉から取り残された人々。社会保障の機能:生活の安定・向上、所得の再分配、経済安定機能。これまでのやり方では雇用は増やせない。人口が少ない国は別として、最低賃金の引き上げは失業を増加させる。日本の生活保護水準は高いが扶助を受けている人は少ない。保険制度の限界。雇用重視の金融財政政策の重要性(ベヴァリッジ)。可処分所得で見た相対的貧困率が高い。社会保障は雇用者向けに設計されている。企業を生活保障の責務から解放する。生活保護の基準を下げてベイシックインカムを導入する。
2,功利主義の再分配理論ではある程度の累進課税が正当化される。リベラリズムの再分配理論。。富の再分配をどの程度にするかは考え方次第。現状の福祉政策がうまくいっておらず、官僚的な無駄を生んでいる。BI思想。ミルの示唆とマルサスが示唆する限界。フリードマンから左派へ。負の所得税。国家の介入を極力おさえ、経済効率をあげる。10分の1程度。実際に70年代米国で導入が検討される。あるいは、福祉制度の代案として。権利として所得の再配分に代わるBI。パリース:雇用レント。資源の占有による所得はどれくらい正当化されるか? 
富の正当性、所得配分の正当性。富を偶然の所産と考える例、近衛文麿。日本のアジア侵略。明治の元勲。富は創造される。金融化の進展は富の正当性を疑わせる。報酬制度の問題。不正な利益の返還。貧困緩衝のためのBI.。ブラジルの例。米国での給付付勤労税額控除。貧困は単に所得がないだけでなく、社会から排除されることでもある。パレンス・パトリエ。自己決定権に欠ける人の保護。必ずしもあまりうまくいってない。日本の児童虐待パターナリズム。正しい生活に導く。男性は職業訓練をすると収入が下がる。ケースワーカーの不正関与。生活保護の不正受給。職業訓練の不正。うまく機能していない。
3,代替財源になるもの。所得控除、老齢基礎年金、子ども手当雇用保険。公共事業関係費、中小企業対策費、農林水産省予算、地方交付税交付金(民生費)の一部。奨学金に代替え可能。生長による所得増。所得分配が均等な国では累進課税は中間所得の課税を強化することになってしまう。現行の生活保護水準とあまりかわらないBIなら導入可能。給付水準を下げて全員に配るべき。医療費は代替えできない。固定資産税の見直し引き上げが可能。現行の税率大きく変わるわけではない。移民の受け入れを限定せざるを得なくなる。すべての国民に銀行口座を保障し、所得補足率を高める。所得の低い地域には自治体ではなく住民に直接お金を配る。地方の所得の底上げ広く薄いばらまきはよい。児童手当、農業政策、林業政策、震災復興。