SIGHT5月号

 

正常だから鬱になる編

 うつ病の本っていくつか読んでみたけれど、どうしても病態と治すという話が中心になってしまっていて社会に戻すという発想が希薄*1。でも、発病者は多くの場合、一定の社会環境、それも多くは職場で経験してきたことをきっかけに発病しているわけだから、復帰する社会のことまで視野に入れなければ、再発のリスクがきわめて高いものになってしまうのはほとんど当たり前という感じがする。その点で、この特集がユニークなのは、社会復帰を視野に入れながらうつ病について論じていることだ。まあ、ちょっとこの人、復帰する現場がどういうものなのかってことに無神経なんじゃないというのもあったけど。 
 最初に、インタビューされてる人って何者なんだろう?新書でこんなのが出ている。

「普通がいい」という病~「自分を取りもどす」10講 (講談社現代新書)

「普通がいい」という病~「自分を取りもどす」10講 (講談社現代新書)

 

内閣支持率はなぜ乱高下するのか?

 菅原琢によれば「日本において内閣支持率が低くなり過ぎるのは、有権者と政党の関係が不安定で政権与党の支持率が低すぎる、下がり過ぎるということから来ている」(187頁)。これが一部で政権交代が起きやすいと称揚された現行の選挙制度と結びついていることはみやすい。「日本の折衷型の選挙制度のもとでは、大政党の支持率は議席率に比べてかなり低くなる構造にあると言える。結果、内閣支持率(政権与党の支持率)は選挙結果(議席率)に比較してかなり低くなるのである」(188頁)。
 また、二大政党制が政党間の違いを不明瞭にするというのもしばしば指摘されてきたことだ。「現状では、民主党でも自民党でも、農村部からは農村代表の議員が、都市部からは都市代表の議員が選出され、両党の中で政策路線を巡って対立する状況となっている」(191頁)。しかも、政党は強い候補を擁立したいから「日本の選挙区の選挙は、候補者の組織、人脈、資産に大きく依存するものとなっている」(191頁)。
 納得。そうすると、自分たちが作った制度に自縄自縛されて、自民党政権時代では首相がころころ代わり、民主党じゃ内部抗争をやってることになりますな。他方で、地方では首長が、そうした政党の状態を裏返す格好で、議会を、つまりは間接民主制を批判している。それも、あいつらあんなにもらってるみたいなえげつないルサンチマン話で*2
 ついでに、中東政変については、藤原帰一曰く、エジプトの状況がかつてのフィリピンとよく似ていると。これが従来の革命とは違うのは、中心となる政治組織がなく、「これらの民衆革命では、独裁者はいなくなるんだけれど、それ以外の変化はほとんど何もない。新しい急進的な組織が権力を握るというパターンも、ただのひとつもない。結局、デモクラシーという装いのもとで、政治の世界では昔の名前の人たちが活躍するという、そういうダイナミズムなんですよ」(110頁)。
 今回はタケシのインタビューも含めいろいろ面白い。
 

SIGHT (サイト) 2011年 05月号 [雑誌]

SIGHT (サイト) 2011年 05月号 [雑誌]

 

*1:私見ではこの本しか知らない。教えられるところも多かったけど、もっとふれてよいこともあるように思えた。というか、復帰する社会を考えると他の研究領域との連携って必要になると思うんだよね。

「うつ」からの社会復帰ガイド (岩波アクティブ新書)

「うつ」からの社会復帰ガイド (岩波アクティブ新書)

 

*2:ちなみに、やたらと民意を口にする河村氏ですら、有権者過半数を得て当選しているわけではない。こないだの市議会選挙だって、テレビじゃ市民の関心は高いって報道してたけど、実際の投票率は43.96%(前回39.97%)とさしてあがったわけじゃない。それどころか、過去4番目に低い数字だったそうな。http://www.yomiuri.co.jp/election/local/news/20110313-OYT1T00109.htm 個人的には、減税日本が第一党になったことより、この投票率の低さの方が事態をよく表してるんじゃないかと思っている。本来、教育とか福祉が争点にならないとおかしいと考えるので、決して好ましい事態だとは思わないが、(地震もあったし)気分としては投票に行く気にならないのはよくわかる。こんな調査結果も出てますな。http://www.maniken.jp/gikai/date/20110328nagoya.pdf。あと、参考までに当初は河村市長のブレーンだった後房雄氏のブログも。http://blog.canpan.info/jacevo-board/