坂部恵『和辻哲郎』

 前著とのつながりで再読してみたのだが、いまごろになってこの本のすごさがわかってきた。なにしろ最初は歌舞伎の話なんだから、以前読んだときはきっとこれはなんなのだろうと思いつつ読んだはずであり、どれほどの理解がえられたのやらおぼつかない。しかし、いま読むとそこには透徹した読みが貫かれていることがわかる。歌舞伎の話は「人間」の話の読みに接続され、さらに『風土』や『古寺巡礼』につながり、非常にするどい和辻倫理学批判がえぐり出されてくる。あら、文庫化してますな。

和辻哲郎―異文化共生の形 (岩波現代文庫)

和辻哲郎―異文化共生の形 (岩波現代文庫)