和辻批判のところしか読んでなかったのだがアタマから読んでみることにした。文章は明晰かつ強引。切れ味鋭いけど穴もまた大きい。ま、私はこれが戸坂の議論の時代性をよく示していると思う。序論で自由主義がとりあげられ、「処で実際問題として、この文学主義は、多く文学的自由主義者である処の日本現在のインテリゲンチャの社会意識にとって、何より気に入ったアットホームなロジックなのである」(23頁)なんて述べられると、戦後の丸山眞男のあの指摘はもうここで戸坂がやってると思う。しかも、ここから話は文献学主義に向かうのだが、ここで標的にされている一人が和辻哲郎であることはよく分かるというか、実際に和辻が俎上にあげられる。行論ではソシュールも引き合いにだされる。あるいは、共通感覚を論じてトマス・リード(あるいはバーク)が評価されたりする。これは面白い。しかし、いまだに解説は古在由重ってのはないんじゃない?
- 作者: 戸坂潤
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1977/09/16
- メディア: 文庫
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