和辻における「人格」の概念の変容と、それがさらに「間柄」と話とどう接続していくのかを丹念に追いかけていった本。とても、勉強になる。いくつか他の本に目を通したら再読してみた方がよさそう。
論考「人格と人類性」の発表は昭和六(1931)年だが、すでに見たようにこの論考は、『原始仏教の実践哲学』以来の「もの」と「こと」という区別を人格の上に重ね、「人格」と「人格性人類性」という区別をカントの人格論において見いだすというものであった。論考「人格と人類性」において見られるのは、人格という「もの」性の底に、それを人格たらしめる「こと」としての人格性人類性が見られるという構造であり、その考察において、両者の区別が強調されたり、また統一が強調されたりしつつも、その構造の図式そのものは一貫していた。
しかし、こうした議論の延長にそのまま「間柄」の話がつながるようにはなっていない。
結論から言えば、この二つの構造は重ね合わされ、すり合わされてゆくのである。和辻倫理学は、単に間柄構造があらわれたことによって誕生するのではなく、後発の間柄構造が、先発の人格構造とすり合わされ、接ぎ木されるときに初めて誕生する。
- 作者: 宮川敬之
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: 単行本
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