イタリア古寺巡礼

 『古寺巡礼』が学生時代に読んで回ってみるものだとすると、この本はどうすればよいのだろう。名前挙げられてもほとんど作品が思いつかないのだから、そういう意味では読んでも仕方がない。和辻お得意のメタファーもあまり見られない。ただ、『風土』つながる議論は各所に見出すことができる。ダヴィンチの「受胎告知」も俎上にあげられるが、それとの関連で「宗教芸術であったものが、15世紀後半に至って宗教芸術でなくなってくる、という一つの転機を認めなくてはならぬ。題材は同じものを襲用して行くのであるが、しかしそれを現す人間の姿は、題材から独立したそれ自身の意義を担ってくる」(196頁)。

イタリア古寺巡礼 (岩波文庫)

イタリア古寺巡礼 (岩波文庫)