21世紀の資本

第13章

 過去を一掃して格差の構造を一変させ痰は、相当部分が20世紀の両大戦だった。しかし、いまや富の格差は歴史的な最高記録に迫っている。そのために必要なのは世界的な累進資本税だ。「2008年の危機が大恐慌ほど深刻な崩壊を起こさなかった主な理由は、今回は富裕国の政府や中央銀行が、金融システムの崩壊を許さず、1930年代に世界を奈落の縁まで押しやった軍港破綻の波を避けられるだけの流動性を作り出すことに合意したからだ」(491頁)。しかし、今夕の不透明性や格差の上昇といった構造的な問題に対する持続的な対応はできていない。
 とはいえ、富裕国は例外なく、20世紀の間に国民所得の10パーセントが税金になるという均衡から、3分の1から半分までにその数字が上がり新たな均衡に移送している。これらの片方の半分は保健医療と教育、残り半分は代替え所得、移転支払いへ行く。とりわけ、年金。こうした現代の所得再分配は、権利とアクセスの平等という原理に基づいている。
 教育をつうじた社会的モビリティの実現はあまり有効に働いていない。とりわけ、米国。ペイゴー方式の年金の収益率は経済成長率に等しい。だから、積み立て方式が望ましいとする議論も出てくるわけだが、積み立て方式への移行が困難が伴うし、資本収益率はかなり変動制が高くリスクが伴う。とはいえr>gを無視するわけにもいかない。また、年金口座は制度がやたらと複雑である。個人口座に基づく統合されて年金制度が必要。
 富裕国と最貧国や中進国の課税水準を見ると、後者は15パーセント程度で、近年課税水準はさらに大幅にさがっている。どんな税制が途上国に登場するかは最重要性の課題である。
 

第14章

 所得課税、資本課税、消費課税、労働所得だけにかかる社会保障拠出金と分類できるが、より重要な特徴づけは比例的か累進的か。最高所得や最大級の富にたいする累進課税率だけでも大きな意味を持つ。しかし、近年、資本所得が累進所得税から外され、所得階層トップでは税金が逆進的になっている。
 累進課税所得税についても相続税についても民主主義と両大戦の産物である。このときの先進的だったのはイギリスと不平等の拡大を懸念した米国だあり、とりわけ相続税に顕著だったが、ヨーロッパや日本はのキャッチアップをおそれて1980年代には方向転換する。他方、西欧や日本は安定的であり、これはトップ百分位の国民所得に占めるシェアと密接に関係している。とりわけ、米英では完全に重役の給与の決め方が変わってしまった。1980年代以来、先進国における生産成長率と最高限界税率の低下との間に統計的に有為な関係がない。英米とヨーロッパ、日本の生産成長率にたいした違いがない。
 最高所得に対して没収的な税率をかけるのは、可能であり超高給与の増大を阻止する唯一の方法である。それで、米国の経済成長が下がるわけではない。ただし、実現の可能性は低い。
 

第15章

 民主主義がグローバル化金融資本主義に対するコントロールを取り戻すための理想的なツールは資本に対する世界的な累進火星であり、高水準の国際金融の透明性と組み合わせる必要がある。世界の富みに対する累進的な年次課税で資本主義を規制し、富の格差の拡大を止め、危機の発生を避けるために金融と銀行のシステムに有効な規制をかけること。
 実現は難しいとしても、参照点にはなるし、大陸や地域レベルで導入することからはじめることができる。富の分配と金融規制のために必要なのは金融透明性であり、銀行情報の自動共有の国際合意を明確化して拡大し、あらゆる金融資産と負債に向けた報告制度を作る。まず国際レベルまで銀行データの自動送信を拡大し外国銀行の資産情報も含めるようにする。タックス・ヘイブン対策。EU指令、FATCA。必要な情報を提供しない国に制裁を加える。
 累進資本税を正当化する理由。まず、富の階層トップの実効税率は極度に低い。金持ちの貢献能力をきちんと評価できる資本の直接課税。また、資本税は資本ストックにできるかぎり最高の収益を求めるインセンティヴになりうる。ここで取り上げているのは資本に対する永続的な年次課税だから、理想的税率は穏健なものでなければならないが、これはかなりの税収になる。純資産20万ユーロ以下なら0,1パーセント、20〜100万ユーロは0.5パーセント。500万ユーロ以上の財産に対する税率なら2パーセント以上。利子や高利貸しの禁止。社会主義の実験。「資本税は、民間資本とその収益という永遠の問題に対する対応としてもっとも非暴力的で、もっとも効率的だ。個人のとみに対する累進的な課税は、社会全体の利益の名の下に、資本主義に対するコントロールを取り戻す一方で、私有財産と競争の力を活用する。それぞれの資本タイプは同じ形で課税され、アプリオリな区別はつけない」。「21世紀のグローバル化した世襲主義のために結成されたもの」(558頁)。
 政府が経済と財政の独立性をある程度回復する最も単純な方法は、保護主義と資本統制に頼ることだが、資本税に比べると不十分なもの。中国の資本統制。石油レントの再分配。移民による再分配。しかし、移民は格差問題の一部しか解決することができない。公正で透明性のある国際税制があれば途上国からの富の流出を防ぐことができる。


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