都市へ仕掛ける建築

 親子で建築家のディナー&ディナーの建築の試みを紹介した展示。彼らの建築理念がユニークなのは、周辺の環境になじむような建築を提案するところ。展示を見ていくと、旧工業地域に虫食い状に新しい建築物が建てられ再開発が進められていくとき、そこにどんな建築物を建てればよいか?彼らは、周囲の工業建築と調和するような工業地帯の面影を残すような建築物で旧来の建築を置き換えていくことを提案する。それは、その地域のかつての面影、記憶を残すような建築だ。
 考えてみれば、新しい建築物ができあがれば、そこに新しい人々が集うようになる。でも、その一方で、昔からその地域に住んでいた人たちもその建築物に集うことになるかもしれないし、いずれにせよ周囲でそのまま生活していくわけだ。そして、彼らには自分たちの暮らしてきた街の思い出や記憶がある。それが新しい建築物に重ねられるとき、そこにはどんな調和が生まれるのだろう。
 以前、よく水俣へ通っていたころ、水俣駅を降りると、チッソの本社があり、その背後には社員の住宅街が控えているあの町並みがそれ自体一個のモニュメントのように感じられたものだった。そんな印象があったボクには、彼らの試みがとても興味深いものに思えた。

http://www.operacity.jp/ag/exh102/