ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 16世紀ネーデルラントの至宝 ― ボスを超えて ―

 開催日二日目だからかなり混んでるかなと思いきや10分待ち。しかも、今日はお年寄りは無料と来ている。初日はもっと空いていたそうな。1時間待ちは覚悟してたんで拍子抜け。「バベルの塔」じゃインパクト弱いんですかね。しかも、出展されているのは「バベルの塔」だけじゃなくてかなりの点数がある。最近の美術館はかなりの金額ふんだくるのに中身すかすかというのがときどきあるけど、これはとっても充実していた。17cオランダ絵画ってとっても面白いんだけど、16cオランダ絵画もとっても面白い。
 まあ、最初はヒエロニムスやアウグスティヌスなど教父の木像があって、時代的にはキリスト教絵画から始まっていくけど、ルネッサンスの影響もあって、だんだんとお決まりの主題を書くだけじゃあ面白くなくなっていくわけですね。
 なかには、幾何学的な図形を組み合わせて遠近法を使わないので、前後関係がひっくり返って見えるような絵がある。これなんか見てるとエッシャーを思い出す。何枚かあるこの手の絵を見てエッシャーがアイデアを得ていることはあるよなって思う。他にも、いささか緑がかっているが鮮やかな青色で描かれた絵がある。作家名忘れたが、これ世界で最初の風景画と言われている作品だそうな。たしか、当時、青色の絵の具というのは高価でそうそう入手できなかったという話があるが、青色が出てくるのはこの作品から、それがオランダの光につながる?
 それから、ヒエロニムス・ボスとその周辺の作家の作品群。ボスの場合も他と同じで工房のようなものを持っていてそこで作品を作っていたらしい。また、模倣した作品が多く、確実にボスの作品と言われているのはここでも数点しかない。また、半世紀くらいたってボス・ブームが起きたみたいで、ボスのモチーフを繰り返した作品が続く。とにかくボス系の作品は楽しい。鳥獣戯画みたいとかいえばいいかな。なぜか、お魚が大好きで、魚をベースにした奇妙なかわいい化け物・魑魅魍魎が徘徊する絵画や版画がずらっとならぶ。その想像力とユニークさは当時だって面白がられたんだろうな。キリストがオマエは天国オマエは地獄なんてやってる絵もある。半分漫画の感覚である。
 一方、ブリューゲルは明らかにそうしたボスの系譜に連なりながら独自の画風を確立した作家だということになるのだろう。とはいえ、ボス風の楽しい絵もいろいろ描いている。で、最後にわざわざ大げさに作って止まっていせてくれない「バベルの塔」がある。バベルの塔というモチーフはそれまでからいくらもあったようだが、ローマのコロッセウムをモデルにしていて、過去の作品とは一線を画すものになっているようである。バベルの塔をコロッセウムに重ねるというのはバベルの神話がローマ帝国の解体に重なってこれはなるほど感がある。
 大阪も巡回するらしいし、さして混まないなら機会があればもう一回行ってもいいかな。最近、学芸員が悪いって話があったけど。これなんかとっても楽しい企画だけどな。それで人が入らないとすればそれは何が問題なのだろう?そして、人が入らなくてもこういう企画をやるべきだと思う。16cオランダ絵画なんて見られる機会はめったにないんだから。金の話ばかりしていたら、印象派とその周辺、あとは一部の人気作家の企画ばかりになっちゃうよ。