チャルラータ

 サタジット・レイの1964年の未見作品。ひたすら素晴らしいと言うしかない。お話としては、一種、「近代の悲劇」ということになるだろう。二つの宝を持つ男が、それぞれを自分が信頼する身内に託し、その二つともが裏切られる。きわめてリベラルでありながら、一方で、家族や親族に対する信頼を崩さない誠実な男が、まさに個人の自由な判断を尊重がするがゆえに被る仕打ち。もう片方から見るならば、家のなかにとじこめられた妻のなんとも言えない不安が一人の自分の能力を評価する男との出会いによって解放されていく。