自己の分析:理想化転移

 読みにくそうとは思ったが、読んでみれば内容はそれほど難しくはなかった。一次的に自己愛の均衡が、母親のケア不足によって乱されるが、子供はそれまでの完全性を次の二つの自己愛構成態に置き換える(22頁)。
①誇大的で顕示的な自己のイメージ、誇大自己の成立。→鏡転移
②称賛される全能の(移行的な)自己-対象、つまり理想化された親イマーゴにそれまでの完全性をゆずりわたす。→理想化転移
 全能対象(理想化された親イマーゴ)が治療中に活性化されるのが理想化転移である。簡単に、まとめてしまえば、子どもは親を全能対象として理想化するが、それはおうおうにして裏切られ、経験をとおして是正や修正を受けていく(エディプス的失望)。そこで、自己愛の対象が具体的な対象から、超自我に向け返られそれが理想化されると。
 しかし、エディプス期に達するまでに、対象の外傷的な剥奪や喪失が起こると、こうした過程にひびが入る。そして、理想化された親イマーゴ、すなわち原始的で理想化された自己-対象を再現しようと、完璧な対象にこだわったり、それを捜し求めたりすることになる。「潜伏期早期で理想化対象が取り返しのつかないようなかたちで失われるように見える場合には、超自我の理想化は再び放棄される」(42頁)
 「それらはその性質を愛されたり称賛されたりすることはないし、彼らのパーソナリティの実際の特徴や彼らの行為はただ漠然と認知されるにすぎない。彼らは思慕されるのではなくて、子ども時代に確立されなかった精神装置の一部分の機能を代替するために必要とされるのである」(43頁)。
 要するに、理想化転移とは、自己愛を満たすために実質的に誰かを道具扱いするということですよ。
 

自己の分析

自己の分析