日本の夜と霧

 うわさに聞く『日本の夜と霧』を初めて見た。映画そのものの評価はちょっとおき、まず、当時、松竹でこんな政治映画を、しかも現在進行形の映画を撮れてしまったということに驚きを覚えた。ストーリーは、ある結婚式に登場する招かれざる客が語り出すことからはじまる糾弾大会であり、そこには六全協を様々なかたちで向かえた大人と、おそらくは60年安保の「敗北」も収まりきれぬなかにいるブント系と思われる非共産党系の学生が「いる」。話は基本的には、その場で時間に添って進行し、もう一つの結婚式を初めとする回想シーンがそこにインサートされる。ちょっと舞台みたいな感じだった。結局、そこで浮き彫りにされるのは六全協以降も党の方針通りにうごけた人間と葛藤を抱え込んだ人間であり、60年安保の「敗北」を前に葛藤を抱える学生の姿であり、最後に浮き彫りにされるのはもはや前衛たりえなくなった共産党ないしはスターリン主義である。
 しかし、これ今見ても、左翼運動の歴史を知らないとなんのことやら分からないだろうな。客は年配の方ばかりでした。そして、60年安保がこのように総括されるべきモノかどうか私にはよく分からないというか、ま、本でお勉強したとおりの図式ということにはなろうが。いずれにせよ、何本か見てると大島らしさというのがなんとなく感じられるようになるのだが、ちょっと観念的なんだよね、これもそうした作品だな。
 それから、「若者よ、体を鍛えておけ」とうのはフォークルでしか聞いたことしかなかったけど、もともとこうした文脈でこのように歌われる歌だったのですな。
 

あの頃映画 日本の夜と霧 [DVD]

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