『フード・インク』

 『ザ・コーヴ』と賞を競ったというドキュメンタリー。食がらみのドキュメンタリーはずっとフォローしてきたし、並映していた『ありあまるごちそうも』も見てしまったので、我々の食の少なからずが工業製品と化しているという話はもういいなという気分半ばで見ていた。ふつうのドキュメンタリーだし、暴露映像つき。とはいえ、アメリカの実態というのはすごいな。合州国で長期滞在するとなると、医療の問題と食の問題をどうするかってのが、出てくるから煩わしいなと思っていたのだが、なんかますます行く気が失せそう。
 ファースト・フード産業にあわせて、食肉生産が大規模大量生産方式になってしまったせいで、結構な割合で食中毒者がでているようだが、政府はなかなかまともに取り合おうとせず、消費者を守る立法もなかなか成立しないし、州によっては農業生産物の危険性を指摘するだけで、風評被害ということで訴えられかねないらしい。遺伝子組み換え大豆はほとんどアメリカの大豆市場を席巻しており、販売元であるモンサントは自社の大豆を使用しない農家や関連企業をつぶしにかかっていると。ふつうの大豆を栽培していても、周囲で遺伝子組み換え大豆を栽培していれば、自然と交配してしまうことになるが、その場合、法律上、ふつうの大豆を栽培していたことを農家側が説明できなければならないことになっているらしい。でも、裁判になったら大企業対個人じゃ勝ち目がないよな。そして、どう考えてももともとは自然にあった農産物で特許がとれるという考え方はやはりおかしな話だよなあ。まあ、一方で、ウォルマートにオーガニックの製品を売り込む努力をしている企業家の話も出てきて、消費者の選択で変えられるというような話のオチにはなっている。
 アメリカの食事情を知るという意味では勉強になった。でも、もっと本格的なドキュメタリーをみたい。

http://www.cinemacafe.net/official/foodinc/