エレファント・ソング

 新作上映にあたってグザビエ・ドラン作品の回顧上映があり「マイ・マザー」をはじめいくつかの作品を見直す機会があり、一方いくつかを見逃したのだけれど、見直して、あら、「マイ・マザー」ってグザビエ・ドランの作品だったのと今さら気づかされる一方、これがいちばん面白くない?ドランの撮る映画にはある種のタイプというか構造的な同一性のようなものがあり(基本はいびつな三角形です)、いつも同じだったのねと思わずにはいられなくなった。また、そこから考えるとグザビエ・ドランって同性愛者としか考えられない、と思ったらやはりそうだった。もちろん、このこと自体は彼の作品の評価を左右するものではない。むしろ、その前に述べたように彼の自我というか自己愛が欲求するの同じパターンがいくつかの映画作品のなかで繰り返されていることに気づいてうんざりした。その点、この作品は、ドランの監督作品ではない。さて、どんな代物か。決して退屈な作品ではない。でも、ストーリーの構造からして彼好みだろうなとう思わせるところがあるだけではなく、彼がやりたがったという役自体が自己愛感にあふれていて、それをさらに自己愛感たっぷりなドランが演じると、たとえ演技としてはうまいとしても、映画全体ではそれが浮いているというか、オマエやり過ぎだよと言いたくなってしまう。もっと、違ったドランを見てみたい。

マイ・マザー [DVD]

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