父の秘密

 予告編を見てなんだかなーと思っていたのだが本編をみたら圧倒されてしまった。最近の数作のなかでは一押しかもしれない。カメラのとても抑制された距離感とカットが、その素っ気なさの一方で深い情念をかきたてる。ここでは妻の死の詳細は詳らかにされないがその方がよいのだろうな。映画とはいえ、最後は「殺す」しかないだろと思いながら見ている自分がいる。世の中には「精神的な殺人」ってものがあるのよ。「殺ってる」方はなんのためらいも感じてないかもしれないけど取り返しのつかないことはある。世の中、それに気づかずに、あるいは目を向けずに済んでる人の方が多いんだろうな。そして、それがまかりとおるかぎり、どこかで狂うしかない人物がいる。狂ってしまう方がまともなのか。狂わないでいる方がまともなのか。
 最近、ある意味で一族の呪いとかそういうものが分かるような気がしてきて困っている。ま、基本的には現在の問題の過去への投影なのだろうけど、「呪われた家族」とか一族ってある意味でいるのかもしれないな。要するに、家族の実態を直視することができないってことにすぎないわけだけど、家族そのものが閉じていれば、その外の世界と対比ができないわけで、家族の「当たり前」がデフォルトになってしまうわけだ。