燐光群『カウラの班長会議』

 カウラの捕虜脱走事件は、しばらく前某放送局のドキュメンタリーで取り上げられたから、ご存じの方はご存じかと。彼らが脱走を決意するまでの過程を取り上げた舞台。カウラの事件を映画にするという、半ば劇中劇で、半ば劇中劇ではないような、言いかえれば、過去の問題が現在の問題にリンクしてくるような構成。これだけ多数の人間を舞台にあげれば、雑然としてしまいそうなものだがきちんとコントロールされている。
 死を取り上げてるせいもあってぐっと来てしまうところもあるが、結局のところ過去は変えられないけれどというところに話が落ち着いていくのは当たり前か。しかし、実際に宿営地で交わされた会話はあの二つのヴァージョンのどちらがどれくらいをしめるものだったのだろう。