ニュープリント版で再見。初回はやっぱりディティールまで見切れていなかったんだなというのが何とも悔しいというか、面白い。そして、ディティールに気付けば気付くほど笑えるようになる。
一番、最初は、放流で阿賀野川の水位があがるときに、周辺で暮らす人たちが阿賀野川に注意を向けるシーンから始まる。途中のシーンでも阿賀野川の水位があるとみんな阿賀野川を見に来るといった話がでてくる。それから、風向きについてはなす元船乗りのおじさんの話とか、いかに地元の人々が阿賀と結びついているのかがよく分かる一方、こちらも折々映し出される阿賀の映像を前にこころおだやかな気分になれるから不思議だ。
この人たちが水俣病患者であるということはあまり正面切って論じられることがなく、ちょっとしたところでぱっと映像がそれを捉えたりするんだよな。そうすると、思わずこちらもはっとする。坂東弁護士も登場していたんですな。
一方で、船作りにしろ、釣りにしろ、田植えにしろ、この人たちは過去の記憶のもとで生きる人たちである。そのなかには、もちろんそこのは昭和電工や水俣病も含まれる。そうやって生きていく人たちにかぎりないいとおしさを覚えると同時に、映画に撮るという魔力もあろう。登場人物たちがもう一度そうした過去の姿を行き直してしまうのである。これもまたいわく言いがたい思いを私に残していく。
ちょっと話は変わるが、家事というのはいまやしばしば嫌われ、とりわけ男はやらないと言われるが、昔の仕事って家事みたいなものだよね。どういうことかといえば、それをやって生きるのが当たり前であって、そこからはずれて生きる方がよほどの覚悟がいったはず。ひるがえれば、定職についている私だって、それが普通の日常なのであって、それを楽しいとか楽しくないとか(もちろん、言うけど)言ってみたところで、そこから離れるのは早々容易なことではない。つまり、ここで撮りだして描き出されているのはふつうに生きてきた人々の現在に生きるふつうの姿であり、この映画はそこからそれ以上のものを引き出してしまうのである。
次はいつ見ることができるだろう。次の機会が楽しみだ。それから、あらためて佐藤真監督、それから小川茂監督の作品も見直してみたい。
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