倫理学

 「従って植民地廃棄は、近世初頭以来の運動を断然停止し、ここで運動の向きを逆にすることを意味する。この逆方向において世界的な経済組織が樹立され、それぞれの国民がその風土と才能による特殊の清算にいそしみつつ、互いに補い合う調和的な関係を作りだし得るか否かは、人類全体の前に今や痛切な等位の問題としてかかっているのである」(229頁)。
 こう書いている和辻は、決して帝国主義政策を批判しているようにはみえないし、日本の植民地政策については、たとえ戦後にかかれたものであっても、管見のおよぶかぎり一切言及がみられない。『風土』『倫理学(下)』『鎖国』あたりをつきあわせて、戦後にあっても確認できる和辻の史観を論じた論文ってないのだろうか?

倫理学〈4〉 (岩波文庫)

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風土―人間学的考察 (岩波文庫)

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鎖国〈上〉―日本の悲劇 (岩波文庫)

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鎖国 下―日本の悲劇 (岩波文庫 青 144-4)

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