和辻哲郎
予想的中というべきか、残念ながら中身が薄いと思う。和辻の倫理学は、あの『倫理学』には退屈な部分も多いけど、いまだに検討に値する内容が含まれているし、だからこそ、批判する意味もある。そういう意味では、熊野さんに期待しすぎてがっくり。やはり、切れ味がするどいのは坂部恵の和辻論になるのかな*1。ちなみに、本書のなかでは、酒井直樹氏がいかにも彼らしい強引な和辻批判をしている部分が引かれている。熊野さんはそれに応えているようないないような。ちなみに、引用の頁数がふられていないが、レヴィナス云々がでてくるのは酒井本の119頁あたりである。
で、ついでに、酒井本も読み直してみたが(当時、私はろくに和辻を読んでなかった)、あらためて読むと、この本鋭いな。「人間存在の主体的間柄は無である以上、間柄はその客観化に先立って常に了解されているのでなければならない」(102頁)に始まり、「和辻の人間学に徹底して欠如しているのは社会性への配慮なのである」(118頁)。いや、お見事な議論の展開、失礼ながら熊野本ではこの議論をとうていひっくり返すことはできまい。ただ、私はにリーダーバッハのこの解釈の方がより問題を明快にえぐり出しているように思える*2。
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しかし、知らないあいだに『日本倫理思想史』は文庫化されていたのだな。一方、『日本精神史研究』続編は文庫化されてない。『鎖国』も知らないあいだに再版されてる。
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