Noism 劇的舞踊vol.3『ラ・バヤデール−幻の国』

前に見たのが見世物小屋シリーズの作品で今度は劇的舞踏シリーズというわけですね。で、バレエの世界でいろんな演出で取りあげられてるようだけど見たことがない『ラ・バヤデール』を、しかも大ホールで上演する。というわけで、しばらくご無沙汰だったからNoismどんなのになってるんだろうと見に行った。見ていてそれなりに楽しめるけど、途中から感じたのは、こりゃ「折衷主義」だの一言に尽きる。
まず、舞台の冒頭で、看護婦に付き添われて車椅子に座る老人の回想から話が始まる。多分、精神病院にいるんでしょう。それから背景となるシンプルな舞台やライティング、他にも出てくる役者たちの台詞回しをはじめとする身のこなし、これはSPACというか、鈴木忠志の演出手法まんまじゃないかと思った。実際、Noismは鈴木忠志が静岡芸術劇場で舞台監督をつとめていたころから、しばしば静岡で上演しており、初見も舞台芸術公園でだった。
そして、この演技部門が舞踏部門と並行しているだけで、ほとんど舞踏部門と融合しているようには見えない。脚本は平田オリザに依頼したとかで、実際、舞台で設定されている帝国は五つの民族が共存する国であり、その「うわべだけの共存」というのはいかにも現代的というか何を暗示しているかは一目瞭然なのだが、この設定の「複雑さ」はもっぱら演技部門の語りに依存していて、舞踏部門だけを見るとNoismでおなじみの愛の話以上のものにはちょっと見えない。そして、いつも思うのだ。なんで安易に男女を向き合わせてしまうのだろう。向き合うだけでたくさんの意味が生まれて、イメージの幅が大きく限定されてしまうのに。
で、その舞踏部門だが、相変わらず身体が鍛えられてるなと思いつつも、ときとして、舞台で進行する出来事と舞踏がどう関連してるのかわからなくなる。たとえば、あそこでなんで忍者みたいなすり足で女性たちが立ち去らなければならないのだろう?あるいは、音楽と舞踏は当然シンクロさせてはあるのだが、かなり意識しないと舞踏が音楽にのってくれない。なんかちぐはぐなのである。
そして、第二幕の後半冒頭は群舞の見せ場なのだと思うし、それなりにきれいではあるのだが、なぜかこれだとバレエで見たいなと思ってしまう。そうすると、最後はリフティングすることになったんだろうなとか。あえて、バレエではなくダンスでやるのならバレエでは想像できないもっと違った振付ができれば「あっ」と目を引くのに、それは退場の奥行きだけ?そして、そういう瞬間に出会いたいと待ち構えて見ているのだが、結局、ずっと最後まで、なんだかな〜、という感じが拭えず、改めて、車椅子の人物が登場し、登場人物たちがぐるぐると回って最後は見事にぴたっと止まる。まあ、これが永遠に繰り返されていくわけですな。
というわけで、いくつかの独立したパーツの組み合わせでどこまでも作品ができているように感じられて、あえてそれらを同居させた意義のようなものは残念ながら感じられなかった。もっとも、アフタートーク(が、この人、好きですね)で、金森氏ご自身は自信たっぷりにこれらの融合について語っていた。もちろん、私はただの素人である。
しかし、なぜ、いつもこの人、観念的なことしか語らないんだろう。「現代」とか「現代社会」って言葉が好きだけど、一体、何をさしているのかよくわからない。そんなわけないだろという歴史的回顧話はおくとして、素人ではない専門家集団が(素朴に成り立たないのが、ある意味、「現代」だと思うのですが)と強調していたけれど、その専門家集団が異なる専門家集団と出会うとき何が起こるのだろう。双方が何か触発しあうのであれば、そのままの専門家集団ではいられなくなるであろうし、それに応えられるのが専門家集団だとすれば、いったい専門家集団ってなんのことなのだろう。言っていることが、抽象的なので、それについて語ろうとするとどうにもよく分からなくなる。
はじめてNoismを見たときは、ダンサーたちの鍛えられた身体に魅了された。でも、二つ三つと作品を見ていくうちに、基本、Noismっていつもやってることは同じようなものではないのかという気がしてきた。で、あまり熱心に見なくなっていったのだが、地元に来たときはなるべく見に行くようにはしてきた。いつか化けるんじゃないかという期待がどこかにある。しかし、毎度の金森氏の観念的な話を聞いてるとそろそろ潮時かなという気もしてきた。私が期待しているのは彼の観念の世界ではなく、舞台上のイメージの革新なのだ。もっとも、そんな素人の感想とは無関係に世間的にはどんどん評価あがってるみたいですし、こんなこと書く人がひとりくらいいてもいいでしょ?
 

JO KANAMORI  / NOISM by KISHIN

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全然関係ありませんが、一緒にヒットしたこれがなかなかに面白いので

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