日本古代文学史

 和辻の議論とつきあわせてみるために、この本をひっぱりだしてみる。いや、この本面白い。古代文学前史として、土偶に仮面を見て取り、当然、これは祭式つまりは儀礼に結びつけられ、のちのち能にもつながるとされる。すると、和辻の議論とは違って埴輪の人形の相貌も面に由来するのかもしれない。
 一方で、当然、編纂の由来から『古事記』の政治性が確認され、しかも、『古事記』のなかにも切断が見出される。歌謡を含まぬ神代と祭式が結びつくであろう以降の歌謡。というわけで、これが前段の議論に重なることになる。しかも、祭式と結びつきから『万葉集』の初期歌謡と『古事記』の歌謡に連続性が見出される一方で、以後、共同体から切り離された個人の歌が成立して行く流れが確認される。その後は和辻と関係ないので省略するけど、やはり西郷信綱の本は面白い。ずっと横浜市大にいてロンドン大学に行ったりもしていたのか。

日本古代文学史 (岩波現代文庫)

日本古代文学史 (岩波現代文庫)