『〈ことなり〉の現象学』

 で、以前、途中まで読んでほったらかしにしておいてこの本を読んでみた。「役割のオントプラクソロギー」という副題がついていて、レーヴィットやミード、ゴッフマンも参照されているのだが役割についてはあまり立ち入った話は出て来ない。ゴッフマンへの評価は低い。それよりも何人かの思想家の議論を引き合いにしながら〈ことなり〉概念の切れ味を試しているようなところがあって、そこまでなら木村敏の議論でも充分ではないかしらんと思ったりもする。他に役割がらみで論文も書いているようだから、余裕ができたらそちらも読んでみることにしよう。この本とかも読み返してみたいな*1。それに、訳も新しくなったことだしレーヴィットも読まないと*2

差異を生み出すものでありながら、いまだそれ自体は差異(異なり)ではありえない運動のことをほぼ共通に意味するこれらの概念こそ、筆者のひらがな書きの〈ことなり〉にほかならない。
〈ことなり〉はそれ自体で単独に現前することはない。あえて言えばそれは〈異なり〉の現前を俟ってはじめて確認される否定性であり、潜在性である(209頁)。

「ことなり」の現象学―役割行為のオントプラクソロギー

「ことなり」の現象学―役割行為のオントプラクソロギー

*1:

精神病理からみる現代思想 (講談社現代新書)

精神病理からみる現代思想 (講談社現代新書)

*2:

共同存在の現象学 (岩波文庫)

共同存在の現象学 (岩波文庫)