ドガ展(横浜市美術館)

 天気は大荒れだというのでそれなりの遅れを見込んで出かけたのだが、駅についてみれば列車の遅れはさしたるものではなく、思いの外早く横浜に着いてしまい、さあこの時間をどうしようかなどと考え始めたとき、先日、12月31日までやっていることを知り、それに驚きながらもまあ行くことはあるまいと思っていたドガ展に行ってみるのもわるくないという考えがふと頭をよぎり、横浜美術館へと足を運べば、最終日とはいえ大晦日だからなどという甘い考えは通用せず、これまた思いの外の混み、しかも、一点だけ突出するような展示の仕方でよいのだろうかという疑念もいささかありつつ、とはいえ楽しめたこともまた事実である。
 ドガもまた、セザンヌゴッホとは違ったかたちではありつつも、絵のなかに運動を取り込もうとしていたのではないかと思う。それが顕著に感じられたのは、一連の踊り子の絵と裸婦の絵である。当然のことながら、人間は静止しているときでも、力を働かせており、それがとりわけ顕著になってくるような姿態がある。ある一定方向に動き出してしまいそうでいながら、動かない一方で、次の動きを予感させている。裸婦像を見ていると、そんな動かざる動きが感じられる。さらに、踊り子たちになると、複数の踊り子たちがこれまた一定の格好のもとに配置されると、そうした構図自体が次の絵を予想させるような動きを潜在させているように見える。
 そんな絵をみながら、これって写真を意識してるんじゃなかろうかと思えば、次の展示はドガの絵と写真の関係を考えるものになっており、最後は発表されずに残っていた彫像が展示されているといった具合に、こちらの疑問になるほどと思わせてくれる間があって面白かった。