ボクがレス・ポールの名前を初めて聞いたのはおそらく中学生の時で、もちろん(?)レス・ポールその人のことではなく、ジミー・ペイジが使っているギターを介してだった。で、当時は60年代ポップスを特集するFM番組がけっこうあって、FM誌なるものが存在し、新聞でも一週間分のFM番組の放送予定が載ったりしていた。そのなかに、レス・ポールという人の曲がかかるとある。このレス・ポールってあのレス・ポールとどんな関係があるのだろうと聞いてみたのが、レス・ポールその人を知るきっかけだった*1
そうして聞いたレス・ポールの音楽は、ツェッペリンとはほど遠いものだったけれど、そのギター・テクニック(まずなによりもおそろしい早弾き)と不思議な音色がとても印象的だった。その後、だんだんと分かってきたことには、そもそもレス・ポールというギターはこの人が開発したものであり、そのうえ、多重録音技術を編み出したのもこの人らしいってことだった。つまりは、音楽技術の革新者だったのだ。
でも、今回の映画を見て分かったのは、それはまだまだ序の口ってこと。この人、音楽史の生き証人なのだ。戦前、十代前半からプロとして演奏を始め、カントリーからジャズに関心を移し、シカゴへ出てニューヨークへ移る。その間に、ジャンゴ・ラインハルトやチャーリー・クリスチャン等々のジャズ・ミュージシャンと出会い、ビング・クロスビーのバックをつとめるようになる。レス・ポールのプレイ・スタイルが、ジャンゴの影響を受けているというのは言われてみるととても納得。ビング・クロスビーのバックをやってたなんてまったく知らなかった。ビング・クロスビーなんてそれほど聴いちゃいないが、でも、きっと彼のプレイを聴いてるはずだ。
そして、ボクが少しは知っているレス・ポール&メアリー・フォードの時代が来る。あれ宅録だったんだ。うまくエコーがでるマイクその他の配置関係を見つけ、一つずつ音を重ねていく。一度失敗したらゼロからやり直し*2。途中でお客が尋ねてきてそこまでやってきたのがおしゃかになったこともあったそうな。そんなことをしていたのか。そのむかし発売から30年の時を経て聴いたボクが、そして今のボクが聴いても、彼のギターの音色と演奏の斬新さに驚くわけだから、当時、これを聴いた人は一体どれくらいびっくりしのかと思いをはせると想像して余りあるものがある。実際、そうした証言が並べられていくのだが、たとえば、リチャード・カーペンターなんて彼のことを語るだけで、入りこんでいくのがありありと見えた。そして、90歳を越えたこのじいさん、いまだに現役で毎週月曜ニューヨークのイリジウムというクラブで演奏を続けているというのだから、そらおそろしいことこのうえない。
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伝記本も出てたんだすね。
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