岡本太郎『今日の芸術』

 アートをとりまく状況は、当時(原著1954年)と今ではかなり変わってしまっていると思うし、だからまた、加えて考えるべきことはあるのだろうけれど、でも、まだこの本は有効だと思う。文庫解説の赤瀬川原平のことばはよくそれを示している。「たしかにこの本の書かれた時代と違って、前衛芸術の概念は、いまや市民レベルで展開されてい」る。「では岡本太郎のいう世の中になったのかというと、気分では違うのである。いわゆる前衛芸術的なやりくちがあふれた結果、それがただのふつうのスタイルになっているのだ。前衛芸術は誰もがやるもっとふつうのスタイルになることで、どこかへ蒸発してしまったのである」。

今日の芸術は、
うまくあってはいけない。
きれいであってはいけない。
ここちよくあってはいけない。

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

今日の芸術―時代を創造するものは誰か (光文社知恵の森文庫)

「この本を通じていわれていることは、今の問題はいつの世も未来形としてある、今の形としてはあり得ない、ということではないだろうか」。