「ポリス インサイド・アウト」

 思い返してみると、中学生の頃はポリスばかり聞いていたような気もする。少なくとも、当時現在進行形で活動を続けていたバンドでいちばん聞いていた一つであることはまちがいない。たしかに当時商業主義的と批判する向きもあったが、ニュー・ウェイヴなんかとは違って、新しい音をもっと洗練されたかたちでこなしている印象があって耳になじんだ。でも、一面インテリな感じもする。最初の二枚のタイトルはフランス語だし、最後の二枚は『ゴースト・イン・ザ・マシーン』『シンクロニシティ』(の由来は何か自分で調べてみてください)ときた。でも、みんなそう思ってるんだろうけど、あいだの『ゼニヤッタ・モンダッタ』はなんなのだ?しかも、含まれてる曲は「ドゥ・ドゥ・ドゥ・デ・ダア・ダア・ダア」(これ、当時日本語ヴァージョンが発表されている)ですよ。
 それはともかく、そんなわけだから、ドラマーのスチュアート・コープランドが当時撮っていたプライヴェートの8ミリ映像を使ったドキュメンタリーが公開されるとなれば、是非とも見たい。期間ももうわずかというところで行ってみたら、夜一回の上映は結構な入り。だが、年齢層は思ったほど高くない。ボクより年下も多そう。
 当然ながら、まず3人とも若い。8ミリのよれた画像をかなりでかい画面で見せられるのは時としてつらかったが、ツアーでアメリカを移動してはレコード屋でサイン会する風景には、「へー、そこまでやってたんだ」と思わざるをえない。また、楽屋裏は、マネジャーが兄貴だというせいもあって家族的。ここでは、コープランドのカメラは構えてその前に立つようなものではない。それが次第にビッグになって大勢のファンに囲まれるようになっていく、その過程がホントにありのままに映し出されている。最後には、どさっと金勘定をする映像まで。でも、ナレーションでコープランドが語るように、ホテルと会場を往復するだけの生活。そして、---。
 映画を見る前にと、久々にポリスのCDを全部引っ張り出して聞いてみたのだが、あまり懐かしさは感じなかった。むしろ、また聞いてますという感じ(といって、最近あまり聴く機会もなかったのだが)。ポリスというと『シンクロニシティ』が最高傑作だとされることが多いが、当時は、以前の作品より地味な感じがしたし、売れまくって聞き飽きたせいもあってか、この作品よりも以前に発表された楽曲の方が好きだった。だが、改めて聞いてみると、やっぱりこれが一番かな。そういえば、当時、渋谷陽一が「サウンド・ストリート」で、新譜紹介でその一曲目をかけたとき、「な、なんなんだ、これは」と驚いたことを思い出した。
 テクニックのあるバンドって、ライブでは作品発表時よりもペースをあげてプレイすることがあるが、映像にでてくるライブの音は、レコードのそれよりスピードが速くヘヴィー。そんな映像も交えながらあらためて思ったのは、そんなに目立つわけじゃないんだが、アンディ・サマーズってやっぱりギターうまいなー。あれを聞いていると気持ちいい。それにいつもギター抱えてほんと永遠のギター・キッズって感じ。再結成して、来日もするらしいけど、どんな感じになるのか。でも、どうしてだろう?さっきも書いたけど、これほどのバンドで、あれだけよく聴いたのに、それを懐古的に振り返るような気分にはなかなかなれないのだ。時代との擦れ合ってる感じがあまりないとうことなのかな。