ショック集団

 精神病院で起きた殺人事件の犯人をつきとめるために記者が「狂人」を装って入院して、自分が「狂人」になってしまうという筋立て(しかし、最近は「きょうじん」と売っても「狂人」と変換してくれないのね)。を、明かしてしまったところでちっともこの映画の面白さは減じないだろう。原題にあるようにすべては廊下で起こる。
 「狂人」でも素に戻る瞬間があるんだよねというので、目撃者に近づきその瞬間をとらえようとする。しかも、そのためにきちんと相手の狂気につきあってやる。しかも、その「狂人」たちが素にかえって語り始めるトラウマは、言ってみれば、米国それ自体のトラウマのようなものだ。で、一人目は、朝鮮戦争、二人目は、黒人の人権運動、三人目は、原爆。そのうえ、この回想映像だけカラー。
 もちろん、そうはいっても単なるトラウマの語りではなく、これには廊下でのアクシデントがきちんとついてくる。これで、この三つのトラウマをかかえろと言われれば狂うしかないな。B級感あふれる、でも見事な映像にあわせて、米国にたいする批評性まで備わっている。あと、米国のフロイディアンってどんなものかも分かりますね。