志らくのこの会に来るのは、3度目で、最初の3年間は「芝浜」を演るという約束で始めたけれど、去年はその縛りがとけたからリクエストを募って演ることにしたら、また「芝浜」になったという翌5年目である。「芝浜」をやらないせいか当日券も出ていた。私の悪い癖なのかなんなのか下調べはしない。今年は「死に神スペシャル」と銘打っていたが、演目も決まっていたらしく「短命」、「粗忽長屋」、「死神」、「死神後日談」ということになっていた。
前座を立てずにはじまった「短命」では今年は「芝浜」をやらないというマクラをふりつつ、3月にケーシー高峰さんとやるそうです、志らく流のデフォルメ入れながら続けて「粗忽長屋」。こちらも、長屋の全員が粗忽者と来ているという設定が面白く、でも、設定は小さんのまめでそそっかしいのと無精でそそっかしいのという設定にしてあった。いずれもあっさりと。「死神」は、知ってのとおり、円朝がグリム童話を翻案したものだが、ちょいとそれを思わせる場面もあったりして、下げも一風変わっていたがこれも面白かったが、どれもあっさりとやった。
で、中入り後は「死神後日談」である。コイツはゴーリキーの「どん底」を下敷きにしているし、舞台にもかけているらしい。演目的には黒澤を思い起こさせますな。設定は昭和20年の広島。話は面白かったし、風刺も効いていたけど、志らくと談笑はとくに時事ネタを意識したくすぐりをいれますね、古典落語の延長にある噺という雰囲気ではないかな。でも、それまでにかけた噺がうまく効いていて退屈しなかったし、下げは「芝浜」を意識したものになっていた。
終わってみれば、3時半、けっこう中身は濃かったと思うけど、どれもあっさりやっていて以前の長講一席というのはかなり違う。まあ、以前の「柳田格之進」とか「鼠穴」もよかったんだけど、じっくり効かせるというのとはまたちょっと違った味わいがあった。2時間ではねるなら、前座立ててもとも思ったけど、この4席の組み合わせに、前座はいらなかったのでしょうな。談春、志の輔とは30年目にしてさらに違った方向に向かおうとしてるのかもしれない。これはこれで楽しみである。ただ、3時半に終わられると即飲みに行けないのでこればかりは困った。
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