第一論文は常に選択の可能性があるところで、自分の立場にあわせた立論がなされていると思った。面白かったのは、第二論文の以下の指摘。それから、やはり安藤馨はすごいな〜。
「低成長経済下では、経済財における再分配のにおける困難だけでなく、あらゆる価値追求行動が他社の価値追求を疎外する可能性と言う価値問題上の困難が強まる」(100頁)、言い換えれば「外部性が強くなる」と。ふむ、この説明納得するというか、現実問題以上にイデオロギー的にこの手の外部性が強調されていることを感じる(それもどう考えても比較的めぐまれていえるはずの人からね)。たとえば、なんでここまで生活保護者はバッシングされなければならないのか、あるいはなぜここまで官僚一般がバッシングされなければならないのか(官僚を批判するなら批判すべき政策を持ち出してくる部署を特定して批判せよ)。
そして、この手の批判で生じてくるのは、詰まるところ他人と自分を比べてルサンチマンをためては妄想を膨らませては、利権の奪い合いであうようないやらしい社会である。外部性が高まるということは言い換えれば、それだけものごとをゼロサムで考えやすいということであろう。そして、いまだにこの手の物言いが後を絶たない。かくいう私も職場では時としてそうした世界から足抜けできない。仕事が増えているのに働く人と働かない人がいて、しかもそれが評価の対象にならないとくれば腹も立つよ(でも、なんでそんな条件で働かなければならないのかと疑問を出すのも働く方なんだよね)。
われわれが経済成長以外の幸福度をはかる指標を考えなければならなくなればなるほど、実は比較の魔力が働き、幸福度を測れなくなるのではないだろうか?あるいは、公共的な議論に付すことが難しくなるのではないだろうか?大いなる分裂。近代西洋思想史上、比較の魔力を批判し、退けようとしたのは、そういえばルソーだった。
成長なき時代の「国家」を構想する ―経済政策のオルタナティヴ・ヴィジョン―
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