21世紀の資本

第6章

 「所得に占める資本のシェアαの大まかな変遷は、資本/所得比率βと同じくU字曲線を示すが、U字の深さはあまり顕著でもない。つまり資本収益率rは、資本の量βの変化を相殺して弱めたようだ」(208頁)。資本収益率rが高いと資本/所得比率βは低くなり、低いと高くなる。言い換えれば、所得の資本分配率の変化は資本の平均収益率に対応している。20世紀半ばを頂点として山型になっている。産出にあたっては、非賃金労働者(自営業や専門職等)の「混合」所得や投資家の所得は推計が難しい。とはいえ、長期にわたる資本収益率は事実上安定している。18世紀、19世紀の土地、国債。この間に税負担が増え、21世紀に莫大な収益率をあげるのはもっぱら不動産や金融商品であるが、これらは実体資産であり、インフレの影響を考慮する必要がない。
 「資本ストックが増加すると、資本の限界生産性は当然下がる」。問題は資本収益率rがどのくらい急速に減少するか。①資本/所得比率βの増加の反比例より資本rの収益が少ない場合、国民所得における資本所得のシェアα=r×βは、βの増加に伴って減少する。②資本/所得比率βの増加に反比例するほど収益rが低下しない場合、資本シェアα=r×βは、βの増加に伴って増加する。この場合、資本収益減少の影響は、資本/所得比率の上昇に対する資本シェアの増加をせいぜい鈍らせ緩和するだけだ(224頁)。英仏の歴史的には長期的に後者の方が意味があるらしい。

国民所得や世界の所得における資本シェアは、α=r×βで求められる。経験的に見て、資本/所得比率は上がると予想されても、それで資本収益率が大幅に低下するとはかぎらない。超長期で見ると資本の使い道はいろいろある。この事実は資本による労働の長期代替弾力性が、おそらく1より大きいことに注意すればわかる。したがって最も可能性が高いのは、収益率の減少が資本/所得の増加より小さく、資本シェアが増加するという結果だ(242頁)。

第7章

 「実際に所得格差を比較すると、最初に気づく規則性は、資本の格差が、労働所得の格差よりも常に大きいということだ。資本所有権の分配は、常に労働所得の分配より集中している」(255頁)。「結局のところ、最も平等な国々の富の格差ですら、賃金について最も不平等な国々の賃金の格差よりもかなり大きいようだ。私の知るかぎり、資本の所有の格差がそこそこ「穏やかな」社会など存在したためしがない」(267頁)。「具体的に言うと、そのような社会では、人口の最も貧しい半数は、まったく財産を持たないか、持っていてもせいぜい数千ユーロという人々が多いーだいたい人口の4分の1だ」(268頁)。
 「分布の反対側の最も裕福な10パーセントは、総財産の60パーセントを所有している」(269頁) 。「さらに財産構成はこのグループ内で非常に多様だ。トップ十分位のほとんど全員が持ち家だが、不動産の重要性は富の階層を上がると激減する」。「ところがトップ100分位では、金融、事業資産が不動産を凌駕する」。「最も貧しい50パーセントと最も裕福な10パーセントのあいだには、中間層40パーセントが存在する」(269-270頁)。
世襲中流階級の出現は、脆弱なものかもしれないが、重要な歴史的イノベーションであり、これを決して過小評価してはならない」(271頁)。「資産を持つ中流階級の台頭に伴って、上位百分位の友の先週率が半分以下に急減し、20世紀初頭には50パーセントあったものが、21世紀の初めには20−25パーセントにまで減少した」(272頁)。
 「総所得の格差が、資産格差よりも労働所得格差により近いことにも注目。労働所得は総国民所得のの3分の2から4分の3を占めるのだから、これまた驚くにはあたらない」(273頁)。「重要なのは、格差の大きさそのものではなく、格差が正当化されるかということなのだ」( 274頁)。

21世紀の資本

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