21世紀の資本

 18世紀に始まった成長率の離陸は、年間成長率としてはかなりつつましいものだった。第二に、成長に占める人口増加分と経済の部分とはだいたい同じ規模だった」(78頁)。「人口でも一人当たり産出でも、年率1パーセントくらいの成長が長い期間にわたって続くときわめて急速な成長になる。特に、産業革命前の何世紀にもわたる、ほぼゼロ成長の期間と比べればなおさらだ」(79頁)。「本書の中心的な主張はまさに、資本収益率や経済成長率の、一見すると小さなちがいでも、長期的には社会的格差の構造や力学に対し、協力で不安定化するような影響をもたらせるということだ」(81頁)。
 1700年から2012年までにみられた年率0.8%の人口増加率は累積的には大きな意味を持つ。「他の条件が同じなら、人口増加が大きいと格差につながりやすい。というのもそれは相続財産の重要性を引き下げるからだ」(88頁)。同時期、一人当たりの経済成長も同じくらいで、この成長のかなりの部分は20世紀に起きた。これも累積的に大きな意味を持ち、大きな社会変革をもたらす。「同じことは、人口が絶えず他国からの移民により補充されている社会にも当てはまる」。
「逆に、横ばいの人口またはそれよりひどい人口減だと、先代が蓄積した資本の影響は高まる。同じことが経済停滞についても言える。さらに、低成長だと、資本収益率は成長率より大幅に高くなることも考えられ、そうした状況こそが「はじめに」で述べたように、長期的な富の分配格差へと向かう主要な要因だ」。「また、成長が格差縮小に貢献するメカにずむがもうひとつある。格差縮小までいかずとも、少なくともエリート層の入れ替わりをもっと急速にしてくれるのだ」(89頁)。絶え間ない成長は、新規技能を必要とする。
 「ヨーロッパにかぎらずどこでも、長期的な購買力改善と生活水準向上は、主に消費の構造が変化することで生じる」(92頁)。「私が見るに、最も重要な点は、一人当たり産出の成長率が年率1パーセントくらいとうのが実はかなりの急成長であり、多くの人が思っているよりはるかに急速なのだという点だ」(101頁)。「人口増加と一人当たり産出の成長の両方について、18世紀から19世紀にかけてだんだんペースが加速し、そして20世紀にはそれが大きく高まり、いまやそれがどうやら21世紀の残りの期間で、ずっと低い水準にまちがいなく戻りそうだ」(105頁)。この先、人口に続いて、人口一人当たりの生産も低い水準に戻りそうである。
 なお、インフレは20世紀の現象である。「実際、第二次世界大戦終わりに持っていた公的負債を富裕国が始末できたのは、基本的にはインフレなのだ。インフレはまた、20世紀を通じて社会集団間での各種再分配をもたらした。それは通常、混乱した制御されない形で生じた。逆に18,19世紀に支配的だった、富に基づく社会は、この超長期にわたり続いた、きわめて安定した通貨条件と分かちがたく結びついていたのだった」(109頁)。
 

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