維新つながりでこれを読んでみたが、これを読んでも「昭和期日本の構造」が何なのかは分からない。が、日本陸軍の変遷を追ううえでは、226事件(1936)以前以後、そして226事件そのものについても不勉強な私には役だった。最初に、丸山のファシズム論批判が来て、それから、当時の社会状況が取り出されてくる。興味深かったのは「頂点に位置していた岸信介。彼は1917年に東大に入り、20年に卒業している。人脈的には上杉慎吉に近かったが、学生時代の彼を思想的に捉えたのは北一輝であった」という一節(94頁)。もっとも、最後に『北一輝著作集』のテキスト・クリティークめいたことはしていても、著者自身は「昭和維新」の思想については大したことは語っていない。
次に、陸軍がもっぱらの長州閥からいかにして、統制派と皇道派の対立といった如きに変遷していったかを記述。以前、誰か(福田和也かな)の石原莞爾の伝記を読んだけれど、ここまで石原の動きが出ていたかしらん。しかし、あらためて読むと石原の最終戦争論は文明論的というかジンメルの「戦争の政治学」みたいだな。で、226事件の詳細をおって(もちろん、柳家小さん師匠はでてきません)、これでいくとクーデターの正否は木戸内大臣秘書官長の気転にかかっていたということになるな。で、226以降に起こった陸軍内部での事実上のクーデター。で、それが開戦につながる。
ちなみに、以降、木戸は天皇の信任を受けることになるし、それで東条英機を首相に指名することになる。と、考えた場合、226事件での木戸の対処の仕方については歴史的に評価が分かれることになるだろうな。ちなみに、わたしが読んだ講談社学術文庫版ではタイトルとサブタイトルが逆になっております。
二・二六事件とその時代―昭和期日本の構造 (ちくま学芸文庫)
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