空間の日本文化

 ベルクは地理学者なんだけど、この本はどう形容、どう概要を説明すればよいだろう。本人が最後にまとめているけれど、これは通読しなければ理解不能だよな。しかし、面白い。とりあえず、この辺から簡単にメモ。
1、まず、日本において主体は事物、他の人格にいたるまで自己を延長し、「自分の置かれた状況に自分を適応させようと」する。西田があげられてるけど、和辻の議論を見てもそうですな。
2、そのための規約はある種のフォルマリズムである。「空間それ自体と、主体にとっての空間の橋渡しをするもの」「主体を内包するものとしての空間と、主体によっって内包されるものとしての空間をつなぐもの」とは、それは「ある種の移動」、「メタファー」である。「間」や「縁」。形式が実質に先行する(99頁)。
3、人口が過密でありながら、山間地も少なければ、国外移住者も少ない。灌漑設備等に制約される「日本における居住域の集約傾向」が自然の観念と結びついており、人間と自然との区別が弱いメタファーが日本文化に組み込まれている。
4、空間は面的である。「こうしてそれぞれの場所が、それぞれの瞬間に、それ自体を目的として生きられねばならないことになる。それぞれの状況が、内在的論理を、主語述語的で線的な論理ではなく、文脈的で広がり的な論理を持っている。全体を統轄するのは、ある場から別の場への動きである。そこから、住居における「玄関」にせよ、都市における交差点にせよ、結びあわせる場がとても重要になる」(204頁)。
5、「決定的重要性を持つのは、主体と、それが所属すす内側の世界の間に起る同化作用である」(215頁)。これが家から、企業、町内会へとメタフォリカルに連続する。「「日本」という血縁団体は単一体でなければならない。同時に日本人であり、異質であることはできない。他者はいるか、それとも存在しないかどちらかなのだ」(248頁)。
6、「日本社会の様々な細胞が互いに閉鎖状態にあるからこそ、それは、敬語表現、間の人間(「仲人」)、あらゆる種類の仲介物、要するに「結ぶもの」、すでにその重要性を暗示してきたあの「縁」といった共通の準拠点に対してますます大きく開かれているのである」(253頁)。
 

空間の日本文化 (ちくま学芸文庫)

空間の日本文化 (ちくま学芸文庫)

ちとこれが気になり始めたのだが、これ持ってたっけ?
日本風景論 (岩波文庫)

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