柳家小三治独演会
名古屋じゃ三三との親子会で独演会がなくなってしまったので遠征。前座が「元犬」。マクラよりもネタに入ってからつっかえるというのはどうなのでしょう。で、小三治の中入り前は「金明竹」。もう口上を四回きれいにしゃべることはできないのだが、そこはもう年季の入った語り口で楽しませてしまう。というわけで相変わらず前座話や軽い噺の妙味を追求しているのかと思っていた。それはそれで小三治らしい。
で、中入り後も一席となっている。もう、体力的にしんどいのかしら。一席目のマクラももう以前のような勢いじゃないし。フランク永井さんの思い出。あと、何やるつもりだろう、とか思いつついきなり始まった噺が「芝浜」である。えっ、小三治が「芝浜」演るの?でも「おまいさん起きとくれよ、釜のふたが開かないよ」ってまごうかたなき「芝浜」の入りである。
こっ、小三治が「芝浜」演ってる。しかも、どちらかというと簡単に流されがちな前半の描写を丁寧にやって(それが後半の乾いたオチにつながる)、「おまいさん起きとくれよ、釜のふたが開かないよ」と繰り返すことなく、「金拾ったつもり」で遊んだってことをきちんと描写したうえでそれを夢にする。その後も、修羅場に到る前をきれいに描写して、修羅場はあっさり、亭主は怒るまでもないという趣向。最初からちょっと悟った感じなんだよね。
湿った感じは一切なく、どう考えても談志の「芝浜」のあのべったりした感じを切り捨てた「芝浜」だ(私にとっても「芝浜」は談志のなかでは必ずしも好きな噺ではない。冬の噺なら「鼠穴」の方が好きだ)。おそれいりやの鬼子母神。とにかく、私は小三治が「芝浜」を演るという話を聞いたことがない(調べてみたら演ってるんですね)。そして、少なからずは、志の輔は演らないと思うが、この年末に「芝浜」をかけるであろう談志一門はこの「芝浜」をどう聞くのであろう。