立川志らく独演会

 前座さんが「権助魚」やって、中入り前は「佃祭り」。珍しくサゲまでやったのだが、正直言って、出来はイマイチな感じがした。で、中入り後はどうなるんだろうと思ったら、簡単に「ぞろぞろ」で神様の話をやって、夏の噺って花火の話をはじめた。あら、「たがや」かしらん。しかし、この時期に夏の噺を二つというのはとか思いつつ聞いていたら、これ「たがや」じゃない。こんな噺あったかしらんと思いつつ聞いていたら、この噺、まったく別の形で知っていると思った。そう、これウォーレン・ビーティの『天国から来たチャンピオン』の「焼き直し」なのである。しかし、これ、古典と思って聞いた人もいるんじゃないかな。他人と寿命を取り替える「死神」はあっても、死ぬはずがねぇやつが死んじまうとか、死人が他人の身体借りるって噺あってもよさそうなのにないんだよね。でも、落語にあってもちっともおかしくない発想だと思う。それをうまく取り込んだわけだ。もう季節はどうでもいい。
 と思ってふりかえると、「佃祭り」「ぞろぞろ」「たまや〜天国からきたチャンピオン」とねらってネタが並べてあったんだなと。もしかすると、「佃祭り」がはじまって噺かぶるなと思った前座の「権助魚」も伏線になってるかもしれない(しかし、しら人君、間が悪いですよ)。で、私はあの映画を思い出しながら、この噺を聞いてしまった。あの映画、あきらかに荒唐無稽だと思いつつ、でも、これを相手に信じさせてやりといとついついこっちが思ってしまうんだよね。いや、中入り前と中入り後でがらっと印象が変わって独演会でござんした。
 

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