ホーリー・モーターズ

 さて、今晩はレオス・カラックスの新作『ホーリー・モーターズ』である。奇しくも先週のクローネンバーグとリムジンつながりである。どちらも主人公が白いリムジンにのって仕事をするのだ。リムジンなんて見なれない私にここからこれだけの想像力を紡ぎ出せるなんて思いもしなかった。
 もっとも、作風は全然違う。クローネンバーグが台詞で見せるとすれば、カラックスは行為(アクション)で見せる(といって、クローネンバーグのショットが駄目とかそういう話ではない)。あちらは、ジュリエット・ビノシュでこちらはカイリ・ミノーグである(にかぎらず、音楽の使い方がうまい)。
 最初は分けがわからないのだが、すすんでいくうちにこれはオレだとか思い始めてしまう、とはいえ、自分のなかでも複数の解釈が併存してしまうのだから、わけがわからない。多分、もっとマニアがみるとこれいろいろあるんだろうな。とりあえず、本人がこの映画の根底にあるのは「自分自身であることの疲労」と「新たな自分を作り出す必要」というのだけはとても納得できた。