日本近代思想批判

 子安宣邦は和辻の『風土』から次の部分を引いて話に一段落つけてるな。しかし、引用頁ぐらい示してほしい。「我々は、家のアナロギーによって国民の全体性を自覚しようとする忠孝一致の主張に十分に歴史的意義を認める。それはまさに日本人がその特殊な存在の仕方を通じて人間の全体性を把捉するその特殊な仕方に他ならぬのである」(168頁)。でも、この部分「歴史的意義」を認めてるが、全体的評価は違ったんじゃないかな。なんか強引な感じも。ちなみに、この部分は178頁に相当。その前の部分では「この忠孝一致の主張が理論的にも歴史的にも多くの無理を含むことは一見して明らかである。家の全体性は決してそのままに国家の全体性ではあり得ない」(177頁)と述べてから件の部分へ行くんだよな。どうも、この辺の和辻はちょっとどっちつかずの印象を与えるな。

風土―人間学的考察 (岩波文庫)

風土―人間学的考察 (岩波文庫)