続日本精神史研究

 有名な(?)「町人根性」の論文である。ここでは「忠孝」が私事であるように、「町人根性」が批判されている。自由民権運動もその一貫としてのみ把握されている。「かくして我々は功利主義個人主義現代日本の建設のための強い動力であったことを承認しなくてはならぬ。この形態において町人根性が現代の支配的精神となっているのである。そうして、前に言ったように、現代の危険はまさにこの点に存するのである」(500頁)。
 この点でも和辻は一貫してるな。でも、この流れは「国民的存在の自覚」に由来するものだが、それが日露戦争以降弱体化してしまう。でも、家族や友人のように「共同社会的自覚」はまだ残っている。それを支えに「町人根性」に基づく利益社会を国家において止揚するというわけで、これは『倫理学』での議論そのままといっていいのかな。いずれにせよ、こうやって読んでいくと、和辻は日本文化論の一つの源流といってよさそうだな。その手の研究ではどのように論じられているのかな。

70年にこんな版がでている。この叢書どんなラインナップだったんだろう。