鎖国-日本の悲劇-

 まあ、さっさと読み終えましたよ。しかし、刀狩りがいまでは違った評価を受けるであろうな。また、明まで射程に入れた秀吉の朝鮮侵略が軽く扱われてる。それはともかく、これつまるところ、新大陸の発見を始めとするキリスト教の布教史みたいな記述であって、それが念入りに書かれていくのはよほどのことと思うのだが、落としどころは結局こういうことになる。ヘンリ王子を皮切りにスペイン、ポルトガルによる世界的視圏の成立過程をふまえたうえで、鎖国を「これらはすべて世界的視圏をおのれのものとなし得なかったことの結果である」(292頁)としめくくる。しかも、それはもっぱら為政者によると。他はなにもないのね。
 ところで、鎖国というのはきわめてネガティヴな国民性ととらえるようになるありがちな話と和辻のこの議論はどのように連動しているのだろう。しかし、和辻は本当にこれで話がすむと思っていたのだろうか?ちなみに、この話に天皇の出番はない。

鎖国 下―日本の悲劇 (岩波文庫 青 144-4)

鎖国 下―日本の悲劇 (岩波文庫 青 144-4)

鉄砲を捨てた日本人―日本史に学ぶ軍縮 (中公文庫)

鉄砲を捨てた日本人―日本史に学ぶ軍縮 (中公文庫)

 という面白い本がありましたな。それを訳している今や静岡県知事のこんな本もあった。しかし、川勝さんにこの後はあったのかな。
日本文明と近代西洋 「鎖国」再考 (NHKブックス)

日本文明と近代西洋 「鎖国」再考 (NHKブックス)