自己と他者

 いまやあまり言及されることもなくなってしまった観のあるレイン。彼の扱っていた症例は、いまでは「精神分裂病」ではなく境界例だったとのことだが、改めて読んで確かにという感じはあった。たとえば、こんな記述。「他者が空想の体現物として関係されるときには、他者の自己は、黙殺される。他者を〈ありのまま〉に受け容れるふりをするが、そうしているともっともと思っているときに、実はもっとも、他者を体現された幻影として取り扱っているのである」(54頁)。「人間は、他者の存在の欠落を経験するのではなくて、他者に対する他者としての自分自身の存在の欠落を経験する」(171頁)。

自己と他者

自己と他者